深夜0時を過ぎても営業するバーで、DJイベントや生演奏、スポーツ観戦の応援を盛り上げたい。そんな店で必要になるのが、風営法の特定遊興飲食店営業の許可です。
深夜にお酒を出すだけなら「深夜における酒類提供飲食店営業」の届出で足ります。しかし、その届出の店で深夜に客に遊興をさせることはできません。どこからが「遊興」なのかを知らずにイベントを始めると、無許可営業になるおそれがあります。
この記事では、警察庁の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」(2026年7月1日版)と大阪府警察の案内をもとに、特定遊興飲食店営業に当たる場合、深夜酒類届出・風俗営業1号との違い、大阪府で許可が取れる地域と基準を整理します。2026年10月時点の情報です。
特定遊興飲食店営業とは
風営法第2条第11項は、特定遊興飲食店営業を次のように定めています。
ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)
解釈運用基準は、これを「深夜・遊興・飲酒という3要素の全てを満たす営業」と説明しています。
| 要素 | 中身 |
|---|---|
| 深夜 | 午前0時から午前6時までに営業する |
| 遊興 | 営業者側の積極的な行為で、客に遊び興じさせる |
| 飲酒 | 客に酒類を提供する(持ち込みやボトルキープの酒に氷・グラスを出すことも含む) |
3つのうち1つでも欠ければ、特定遊興飲食店営業には当たりません。たとえば深夜は営業しない店、深夜は酒を出さない店、深夜は遊興をさせない店は対象外です。
「遊興をさせる」に当たる行為・当たらない行為
一番迷うのがここです。解釈運用基準は、遊興を鑑賞型(ショーや演奏を見聴きさせる)と参加型(遊戯やゲームをさせる)に分け、営業者側が積極的に働き掛けるかどうかで判断するとしています。

出典:警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」20ページ(PDF:https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoantsutatu2/R080701kaisiyaku.pdf/掲載ページ:https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian.html)2026年10月18日閲覧
| 「遊興をさせる」に当たる例 | 「遊興をさせる」に当たらない例 |
|---|---|
| 不特定の客にショー・ダンス・演芸などを見せる | カラオケボックスでカラオケ装置を使わせる |
| 歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏を聴かせる | 客が自分から歌いたいと言ったときに、マイクや歌詞カードを渡す・装置を動かす |
| ダンスの場所を設け、音楽や照明の演出をして客を踊らせる(クラブ・DJイベント) | ガールズバーやメイドカフェなどで、ショーやゲームをせず飲食物を出すだけ |
| のど自慢大会などのゲーム・競技に客を参加させる | ボーリングやビリヤードの設備を自由に使わせる |
| カラオケを勧め、照明の演出や合いの手で盛り上げる | スポーツの映像を単に見せる(客が自分で応援する場合を含む) |
| スポーツの映像を見せ、客に呼び掛けて応援に参加させる | テレビの映像や録音された音楽を流すだけ |
スポーツバーの場合、映像を流すだけなら遊興ではありませんが、店側が呼び掛けて応援を盛り上げると遊興に当たります。線は「店側が積極的に働き掛けるかどうか」です。

出典:警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」21ページ(PDF:https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoantsutatu2/R080701kaisiyaku.pdf/掲載ページ:https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian.html)2026年10月18日閲覧
1回だけのイベントは「営業」に当たるか
解釈運用基準は、営業を「財産上の利益を得る目的で、同種の行為を反復継続して行うこと」としています。
- 普段は遊興をさせていない深夜酒類提供の店が、関心の高い試合のときに、たまたま短時間だけ遊興をさせた場合は、継続性は認められない
- 短期間の催しでも、2晩以上にわたるものは継続性が認められる
- 1回1晩の催しを繰り返す場合、引き続き6か月以上開催されないなら営業に当たらない
定期的にDJナイトやライブを開くなら、許可が要ると考えておくのが安全です。
深夜酒類届出・風俗営業1号との違い
| 深夜における酒類提供飲食店営業 | 特定遊興飲食店営業 | 風俗営業1号(接待飲食等営業) | |
|---|---|---|---|
| 手続き | 届出(営業開始の10日前まで) | 許可 | 許可 |
| 深夜0時以降の営業 | できる | できる(大阪府の許可地域でも午前5時〜6時は営業不可) | 原則できない |
| 遊興 | 深夜はさせられない | させられる | — |
| 接待 | できない | できない | できる |
| 客室の床面積 | 1室9.5㎡以上(1室のみなら制限なし) | 1室33㎡以上 | 1室16.5㎡以上(和室は9.5㎡以上)ほか |
| 照度 | 20ルクス超 | 10ルクス超 | 5ルクス超 |
接待(特定の客の隣で談笑する、お酌をするなど)をするなら、特定遊興ではなく風俗営業1号です。違いは スナックやラウンジを開くには?風俗営業1号許可と深夜酒類届出の違い、深夜酒類の届出は 深夜0時以降にお酒を出す店が、契約前に確認すべき3つ で整理しています。
大阪府で許可が取れる地域
特定遊興飲食店営業は、どこでも許可が取れるわけではありません。大阪府の条例と公安委員会規則で、営業所を置ける地域が限られています。
| 区分 | 大阪府の定め |
|---|---|
| 原則 | 公安委員会規則(別表第4)で指定する大阪市北区・中央区の特定の町丁で、かつ病院・有床診療所・入所型の児童福祉施設の敷地の周囲おおむね100m(商業地域では50m)の区域の外 |
| 北区の例 | 曾根崎一丁目・二丁目、曾根崎新地一丁目、堂山町(一部)、太融寺町、兎我野町、堂島一丁目、梅田一丁目(一部)など |
| 中央区の例 | 心斎橋筋一丁目・二丁目、東心斎橋、西心斎橋、宗右衛門町、道頓堀(一部)、千日前、難波一〜四丁目など |
| 例外 | 旅館・ホテル営業の施設内にあり、国家公安委員会規則の基準に合う「ホテル等内適合営業所」 |
| 営業時間の制限 | 許可地域でも午前5時から午前6時までは営業できない |
キタとミナミの繁華街の一部以外では、原則として許可が取れないということです。物件を契約する前に、町丁と番地まで管轄の警察署で確認してください。
構造・設備の基準
| 基準 | 中身 |
|---|---|
| 客室の床面積 | 1室33㎡以上(内法で測る。1室だけの店でも除外はない) |
| 見通し | 客室内に、仕切り・ついたて・カーテン・高さおおむね1m以上のいすなど、見通しを妨げる設備を置かない |
| 照度 | 営業所内の照度が10ルクス以下にならない構造・設備(自由に暗くできる調光器は原則不可) |
| 施錠 | 客室の出入口に施錠の設備を設けない(外に直接通じる出入口を除く) |
| 装飾 | 善良の風俗や少年の健全な育成を害するおそれのある写真・広告物・装飾を設けない |
| 騒音・振動 | 条例で定める数値に満たないように保てる構造・設備 |
照明を落として雰囲気を作るクラブでも、照度は10ルクスを超えている必要があります。内装の設計段階で、照明計画と客室の面積(33㎡)を確認しておきましょう。
申請の手数料・期間・書類
| 項目 | 大阪府の場合 |
|---|---|
| 申請先 | 営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課など)を経由して大阪府公安委員会へ |
| 手数料 | 24,000円(3か月以内の期間を限った営業は14,000円) |
| 処理期間の目安 | 45日(申請時に営業所が存在し、実地調査ができる場合。標準処理期間は定められていない) |
| 申請書 | 別記様式第40号(許可申請書)・別記様式第41号(営業の方法) |
| 主な添付書類 | 営業所の使用権原を示す書類、平面図・周囲の略図、住民票の写し・身分証明書・誓約書(法人は定款・登記事項証明書・役員の書類)、管理者の書類 |
様式は大阪府警察の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等に基づく各種申請及び届出様式」のページからダウンロードできます。
開店後の義務:管理者の選任
許可を受けたら、営業所ごとに管理者を1人選任します。管理者は従業者への指導、構造・設備の点検、深夜の苦情の記録などを担い、選任後はおおむね3年ごとに管理者講習を受けます。未成年者や欠格事由に当たる人は管理者になれません。
よくある質問
Q. BGMを流しているだけのバーも許可が要りますか
録音された音楽を流すだけなら、解釈運用基準では「積極的な行為」に当たりません。深夜に酒を出すなら、深夜酒類提供飲食店営業の届出で足ります。BGMの著作権の手続きは別に必要です。
Q. スポーツバーで深夜に試合を流すのは遊興ですか
映像を単に見せるだけ(客が自分で応援する場合を含む)なら遊興に当たりません。店側が客に呼び掛けて応援に参加させる場合は遊興に当たります。
Q. 大阪市内ならどこでも許可を取れますか
取れません。公安委員会規則で指定された北区・中央区の一部の町丁(保全対象施設の周囲を除く)か、基準に合うホテル等の施設内に限られます。
Q. 申請してからどのくらいで許可が出ますか
大阪府警察は目安を45日としています。申請の時点で営業所ができあがっていて、実地調査ができることが前提です。
Q. 照明をかなり暗くしたいのですが
特定遊興飲食店は、営業所内の照度が10ルクス以下にならないようにする必要があります。照度を基準未満に自由に変えられる調光器も原則として設けられません。
入店管理や決済の設備に使える補助金
券売機・自動釣銭機・キャッシュレス端末など、少人数で回すための設備には 省力化投資補助金のカタログ注文型と一般型の違い や デジタル化・AI導入補助金 が使える場合があります。店で流す音楽の手続きは カフェやバーでBGMを流すには?著作権の手続きとJASRACの申込み を確認してください。
この記事で扱った手続き
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まとめ
- 深夜・遊興・飲酒の3つがそろうと、特定遊興飲食店営業の許可が必要
- 遊興は「店側が積極的に働き掛けるか」で決まる。DJ・生演奏・ショー・応援への呼び掛けは当たり、BGMや映像を流すだけは当たらない
- 大阪府で許可が取れるのは、北区・中央区の指定町丁(保全対象施設の周囲を除く)か、基準に合うホテル等の施設内。午前5時〜6時は営業不可
- 客室は1室33㎡以上、照度は10ルクス超、見通しを妨げる設備は置かない
- 手数料は24,000円、処理期間の目安は45日。開店後は管理者を選任する
この記事は制度の内容を整理したものです。個別の店舗が許可の対象になるか、許可地域に当たるかは、管轄の警察署で確認してください。
免責事項
この記事は、行政書士試験の受験生(行政書士登録はしていません)が、公的機関の公開資料をもとに制度の内容を整理したものです。個別の案件についての相談・書類作成の代行はお受けしていません。最新の情報は各行政機関の案内で確認してください。
参考資料(一次資料)
- 警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」(PDF)(2026年10月18日閲覧)
- 大阪府警察「特定遊興飲食店営業」(2026年10月18日閲覧)
- 大阪府警察「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等に基づく各種申請及び届出様式」(2026年10月18日閲覧)
- 大阪府警察「審査基準及び標準処理期間一覧 15 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(2026年10月18日閲覧)
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(2026年10月18日閲覧)


