居抜きで飲食店の営業許可は引き継げる?事業譲渡の地位承継届と、新規許可になる場合

飲食店の営業許可を事業譲渡で引き継ぐときに大阪市へ出す4つの書類 飲食店

居抜きの飲食店を引き継ぐとき、多くの人がまず気にするのが「前の店の営業許可をそのまま使えるのか」です。

答えは、引き継ぎ方によって変わります。

  • 営業そのものを譲り受ける(事業譲渡)なら、地位承継届を出すことで許可を引き継げる
  • 厨房設備や内装だけを買う(造作譲渡)なら、許可は引き継げず、新たに営業許可を取る

令和5年(2023年)12月13日の改正法の施行で、営業の譲渡による地位の承継が認められるようになりました。以前は「営業許可は譲渡できないので、取り直し」と説明されることが多く、今もその前提のままの解説が残っています。

この記事では、大阪市で飲食店の営業許可を引き継ぐときの条件と書類、そして引き継ぐことで背負うものを整理します。2026年9月時点の情報です。

営業許可を引き継げる4つのケース

食品衛生法 第56条は、許可を受けた営業者(許可営業者)について次のことがあった場合、引き継いだ人が許可営業者の地位を承継すると定めています。

ケース引き継ぐ人
営業の譲渡営業を譲り受けた人
相続相続人(複数いる場合は、選ばれた1人)
合併合併後に存続する法人、または合併で設立された法人
分割分割により営業を承継した法人

地位を承継した人は、その旨を届け出る必要があります(同条第2項)。これが「地位承継届」です。

居抜き開業で関係するのは、ほとんどが一番上の営業の譲渡です。個人事業主が法人成りして、個人の店の営業を新しい法人に移す場合も、譲渡による承継として扱われます。

引き継げないケース:設備だけを買う「造作譲渡」

ここがいちばん誤解されやすいところです。

居抜き物件でよくあるのは、前の借主から厨房機器・内装・看板などを買い取る「造作譲渡」です。これは設備という「物」の売買であって、営業そのものの譲渡ではありません。

造作譲渡営業の譲渡(事業譲渡)
何を引き継ぐか設備・内装などの物営業そのもの(許可営業者の地位を含む)
営業許可引き継げない(新たに許可を取る)地位承継届で引き継げる
前の営業者の義務・処分引き継がない引き継ぐ(後述)
契約書造作譲渡契約書事業譲渡(営業譲渡)契約書

どちらの契約にするかで、許可の扱いが変わります。居抜き物件の契約の注意点は 居抜き物件の造作譲渡で失敗しないために|契約前に確認する5項目 にまとめています。

大阪市で出す書類

大阪市では、営業の譲渡で地位を承継する場合、次の書類を出します。

#書類中身
1地位承継届出書(様式第7号)承継する人・譲渡した人の情報、譲渡年月日
2譲渡が行われたことを証する書類譲渡契約書等の写しなど、当事者による譲渡の意思と譲渡の事実が最低限確認できるもの。または大阪市の「営業譲渡に係る証明書」
3営業譲渡に係る確認書譲受人が、承継に伴う義務や責任を確認したことを示す書面
4営業譲渡施設状況報告書譲り受けた施設の状況(衛生管理計画・食品衛生責任者などを変更したか)

加えて、現在の営業許可証を添付します。許可証を紛失している場合は、紛失届の提出と譲渡人への確認が必要になります。

地位承継届出書の様式を見ると、届出の根拠と添付書類がはっきり書かれています。

大阪市の地位承継届出書(様式第7号)。食品衛生法第56条第2項による届出で、譲渡承継の添付書類は譲渡が行われたことを証する書類。出典:大阪市 PDF https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000537/537192/20231213chiishoukei.pdf 掲載ページ https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000537192.html 2026年9月27日閲覧
出典:大阪市「地位承継届出書(譲渡承継・相続承継・合併承継・分割承継)」様式第7号(PDF/掲載ページ「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」)2026年9月27日閲覧

様式の要点は次のとおりです。

  • 届出の根拠は食品衛生法 第56条第2項(営業届出の施設は第57条第2項)
  • 譲渡承継の添付書類は「譲渡が行われたことを証する書類」。譲渡契約書等の写し等で、当事者による譲渡の意思と譲渡の事実が最低限確認できるもの
  • 法人成りの場合は、個人事業主と法人成り後の法人との譲渡契約書等の写し等

引き継ぐのは「許可」だけではない

地位承継で見落とされがちなのが、権利と一緒に義務も引き継ぐという点です。大阪市の「営業譲渡に係る確認書」では、譲受人が次の4点を確認します。

  1. 地位承継により、許可営業者の権利とともに義務(責任)を負うこと
  2. 譲渡人が必要な手続(構造設備の変更届など)をしていなかったことが譲渡後に分かった場合、譲受人が代わりに手続をする必要があること
  3. 譲渡前の行為でも、譲渡後に食品衛生法違反が分かった場合、譲受人が行政処分を受け、被処分者として公表されること
  4. 譲渡時に譲渡人が受けている回収命令や営業停止などの処分は、譲渡後も譲受人に効力が及ぶこと

つまり、前の店の「過去」も引き継ぎます。譲り受ける前に、前の営業者が保健所から指導や処分を受けていないか、設備を無届で変えていないかを確認しておくべきです。

手続きが楽になる代わりに、リスクも一緒に受け取る――これが地位承継の本質です。

改装すると「新規許可」になることがある

居抜きで引き継いだあと、内装を変えたくなるのは自然なことです。ただし、確認書には次の一文があります。

構造設備の変更の内容が、同一性がない程度の増改築であった場合は、地位承継の届出に関わらず、新たに営業許可の取得等が必要となること。

どこまでが「変更届」で済み、どこからが「新規許可」になるかは、工事の内容によって保健所が判断します。厨房の位置を大きく動かす、面積を広げる、客席と調理場の区画を作り直す、といった工事を考えているなら、工事の前に保健所に図面を持って相談してください。事前相談については 営業許可申請に係る事前相談 にまとめています。

施設の基準そのものは 大阪市の飲食店営業許可、保健所の検査で落ちるのはどこか を参照してください。

引き継いだ後に忘れやすい手続き

営業許可を引き継いでも、それ以外の手続きは新しい営業者としてやり直すものがあります。

手続き引き継ぎ後にやること
食品衛生責任者前の店の責任者がいなくなるなら、新しい責任者を選任して届け出る
防火管理者・消防の届出収容人員によっては防火管理者の選任届が必要。使用開始届の要否は消防署に確認
深夜酒類提供の届出深夜0時以降に酒を出すなら、警察署への届出は別に必要
税務署・社会保険個人事業の開業届、法人の設立届など、営業者としての届出

食品衛生責任者の選任と講習は 食品衛生責任者の設置(選任) で確認できます。深夜営業は 深夜0時以降にお酒を出す店が、契約前に確認すべき3つ、消防は 飲食店の消防手続きは内装工事と同時に動く にまとめています。

相続で引き継ぐ場合

営業者が亡くなり、家族が店を続ける場合も、地位承継で許可を引き継げます。大阪市で追加で必要になるのは次の書類です。

  • 戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
  • 相続承継資格確認書
  • 相続人が2人以上いる場合は、承継する人以外の相続人全員の同意書

令和3年(2021年)5月31日までに取得した許可(旧制度の許可)の承継は、様式や手続きが異なります。大阪市の案内を確認してください。

よくある質問

Q. 地位承継すると、許可の有効期間はどうなりますか

地位承継は、前の営業者の許可営業者としての地位を引き継ぐものです。有効期間についても、許可証に記載された期間を確認のうえ、更新の時期を管理してください。

Q. 屋号(店名)を変えても地位承継できますか

地位承継の届出とは別に、屋号など許可申請事項に変更があれば変更の届出が必要になります。どの手続きが必要になるかは、保健所で確認してください。

Q. 前の営業者と連絡が取れません

譲渡を証する書類には、当事者による譲渡の意思と譲渡の事実が確認できることが求められます。前の営業者の協力が得られないなら、地位承継ではなく新規の営業許可で進めることを検討します。

Q. 造作譲渡と事業譲渡、どちらで契約すればいいですか

許可を引き継ぎたいなら事業譲渡ですが、その場合は前の営業者の義務や処分も引き継ぐことになります。前の店の状況が分からない、大きく改装する予定がある、という場合は、造作譲渡+新規許可のほうが整理しやすいこともあります。

Q. 地位承継届はいつまでに出せばいいですか

食品衛生法は、地位を承継した人は遅滞なく届け出るよう定めています。譲渡の日が決まったら、書類を揃えて早めに提出してください。

この記事で扱った手続き

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まとめ

  • 営業の譲渡(事業譲渡)なら、地位承継届で飲食店の営業許可を引き継げる(食品衛生法 第56条)
  • 造作譲渡(設備だけの売買)では引き継げない。新たに許可を取る
  • 大阪市の書類は地位承継届出書・譲渡を証する書類・確認書・施設状況報告書の4点+現許可証
  • 承継すると、前の営業者の義務や行政処分も引き継ぐ
  • 同一性がない程度の増改築をすると、承継しても新たな許可が必要になる
  • 食品衛生責任者・消防・深夜営業などは、新しい営業者として確認し直す

この記事は制度の内容を整理したものです。個別の店舗が地位承継の対象になるか、改装が新規許可に当たるかは、店舗を管轄する大阪市保健所の生活衛生監視事務所にご確認ください。

参考資料(一次資料)


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