居抜き物件の造作譲渡で失敗しないために|契約前に確認する5項目

造作譲渡契約で確認すべき5項目を示した図 飲食店

飲食店を開くとき、居抜き物件は魅力的です。厨房設備がそのまま残っていれば、内装工事の費用と期間を大きく削れます。

ただし、居抜きには普通の賃貸借にはない契約が絡みます。造作譲渡契約です。

そして、ここでのトラブルは金額が大きくなりがちです。

造作とは何か

造作とは、建物に取り付けられた設備や内装のことです。厨房機器、空調、カウンター、内装の仕上げなどが該当します。

建物そのものは貸主のもの、造作は前の借主のもの——これが基本の構図です。

だから居抜きでは、貸主から建物を借りる契約とは別に、前の借主から造作を買う契約が発生します。この2つは別の契約で、相手方も違います。

3つの契約が同時に動く

契約相手方内容
賃貸借契約貸主(オーナー)建物を借りる
造作譲渡契約前の借主設備・内装を買う
解約・原状回復の合意貸主 ⇔ 前の借主前の契約を終わらせる

この3つが噛み合わないと、話が止まります。

たとえば、前の借主と造作の金額で合意しても、貸主が新しい借主として自分を承諾しなければ、そもそも入居できません。

逆に、賃貸借の交渉が進んでいても、造作の金額で折り合わなければ、設備を全部撤去された状態で引き渡されることになります。

契約前に確認する5項目

1. 譲渡の対象に何が含まれるか

「厨房設備一式」という書き方は危険です。何が入って、何が入らないのかを、品目で書き出してください。

冷蔵庫は入っているか。食器は。看板は。エアコンは。

引き渡し当日に「これは持っていきます」と言われても、リストがなければ争えません。

2. リース中の機器が混ざっていないか

これがいちばん多いトラブルです。

厨房機器はリースで導入されていることがあります。リース中の機器は前の借主のものではありません。所有権はリース会社にあります。

売る権利がないものを買っても、引き渡しを受けられません。

リース契約書の有無を確認してください。

3. 設備が動くかどうか

見た目では分かりません。

厨房機器は、通電して動かしてみないと状態が分かりません。空調も同じです。

引き渡し後に故障が判明したとき、誰が直すのか。契約書に書いていなければ、買った側が負担することになりがちです。

「現状有姿」と書かれていたら、故障のリスクは買主が負うという意味です。

4. 原状回復義務がどうなるか

これが金額としてはいちばん大きい論点です。

店舗の賃貸借では、退去時にスケルトン(内装を全部撤去した状態)で返す特約が付いていることがあります。

居抜きで入るということは、前の借主が撤去しなかった造作を引き継ぐということです。

つまり、自分が退去するときに、前の借主の分まで撤去費用を負担する可能性があります。

自分の退去時に何をどこまで戻すのかを、賃貸借契約書で必ず確認してください。

5. 造作買取請求権が排除されていないか

退去するとき、自分が入れた造作を貸主に買い取ってもらえる権利があります(借地借家法33条1項)。ただし貸主の同意を得て付けたものに限られます。

そして実務上もっと重要なのは、この権利は特約で排除できることです。

店舗の賃貸借契約では、排除する特約が置かれているのが一般的です。排除されていれば、自分が入れた造作は退去時に買い取ってもらえず、撤去して返すことになります。

契約書に「造作買取請求権を放棄する」旨の条項がないか、必ず確認してください。

費用の扱い

造作譲渡の代金は、開業資金として無視できない金額になります。

税務上は、譲り受けた設備を資産として計上し、減価償却していくことになります。消費税の扱いも、譲渡人が課税事業者かどうかで変わります。

「内装工事費より安いから得」という判断だけで決めないほうがいい理由が、ここにもあります。

よくある質問

Q. 造作譲渡の金額に相場はありますか?

明確な相場はありません。前の借主が投じた金額、残存価値、そして「早く手放したいかどうか」で決まります。閉店を急いでいる場合は下がることがあります。

Q. 営業許可は引き継げますか?

「造作だけを買う」のか「営業ごと引き継ぐ」のかで変わります。

設備・内装だけを買う造作譲渡では、飲食店営業許可は引き継げません。あらためて取り直しになります。

一方、営業そのものを譲り受ける(事業譲渡)場合は、許可営業者の地位を承継できます。

前条第一項の許可を受けた者…が当該営業を譲渡し、又は許可営業者について相続、合併若しくは分割…があつたときは、当該営業を譲り受けた者…は、許可営業者の地位を承継する。(食品衛生法56条1項)

承継した側は、遅滞なくその旨を届け出ます(同条2項)。

つまり、契約の組み立て方で結果が変わります。 造作の売買契約にするか、事業譲渡契約にするか——ここは値段だけでなく、許可の承継まで見て決めるべきところです。

⚠️ ただし、承継できるのは許可であって、設備が現在の基準を満たしているかは別の話です。

Q. 造作譲渡契約は、不動産会社が作ってくれますか?

賃貸借契約は仲介会社が扱いますが、造作譲渡契約は当事者間の契約です。取り扱いは会社によって異なります。誰が何を作るのかを、早い段階で確認しておくべきです。


まとめ

居抜き物件は、費用と期間を削れます。ただし契約が3つ同時に動くため、確認する箇所も増えます。

  • 譲渡の対象を品目で書き出す
  • リース中の機器が混ざっていないか
  • 設備が実際に動くか
  • 退去時の原状回復をどこまで負うか
  • 造作買取請求権が排除されていないか

このうち4番目——原状回復——が、いちばん後から効いてきます。入るときの安さと、出るときの負担は、別の話です。

※ 本記事は制度と実務の情報提供を目的としたものです。条文は e-Gov 法令検索で確認しています。個別の契約については、契約書の内容をご確認ください。

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