ワインバーで出しているボトルを、栓を開けずに持ち帰りで売りたい。居酒屋で地酒の瓶を販売したい。こうしたときに必要になるのが、税務署の酒類小売業免許です。
飲食店の営業許可(保健所)は、お酒を店内で飲んでもらうための許可です。栓を開けていない瓶や缶のまま売るのは酒類の小売に当たり、酒税法の免許が別に要ります。免許を受けずに酒類を販売すると、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です。
この記事では、国税庁の「一般酒類小売業免許申請の手引」と「通信販売酒類小売業免許申請の手引」をもとに、飲食店が免許を取るときの要件、とくに飲食店と酒販店を兼ねる場合の区分、申請の流れを整理します。2026年10月時点の情報です。
免許が要るのはどこからか
| 売り方 | 必要なもの |
|---|---|
| 店内で、グラスに注いで出す | 飲食店営業許可(酒類販売業免許は不要) |
| 栓を開けていない瓶・缶を店頭で持ち帰り販売 | 一般酒類小売業免許 |
| テイクアウト・宅配で未開栓の酒を販売(近隣のお客さん向け) | 一般酒類小売業免許 |
| 2都道府県以上の広い範囲の消費者に、ネットやカタログで通信販売 | 通信販売酒類小売業免許 |
ポイントは「その場で飲むか、持ち帰るか」と「どの範囲に売るか」の2つです。
一般と通信販売の違い
| 一般酒類小売業免許 | 通信販売酒類小売業免許 | |
|---|---|---|
| 売り方 | 販売場(店頭)での小売 | 2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象に、インターネットやカタログで条件を示し、通信手段で注文を受ける販売 |
| 扱える酒 | 原則として全ての品目 | 国産酒は、前年度の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満の製造者の酒など。輸入酒は制限なし |
| 店頭販売 | できる | できない(店頭での小売や1つの都道府県だけを対象にした小売はできない) |
国産のビールや日本酒でも、大手メーカーの酒は通信販売酒類小売業免許では扱えません。地方の小さな蔵元の酒や輸入ワインを通販したい場合に向いた免許です。
なお、国税庁の手引きは、県をまたぐ電話やインターネットの注文でも、自分の販売場の近隣エリア(商圏)であれば一般酒類小売業免許で販売できるとしています。
飲食店が免許を取るときに一番の壁=需給調整要件
一般酒類小売業免許には4つの要件(人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件)があります。飲食店にとって問題になるのは、需給調整要件です。
手引きは、申請者が「酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないこと」が必要だとしています。そのうえで、例外として次の注記があります。

出典:国税庁「一般酒類小売業免許申請の手引」8ページ(PDF:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/01.pdf/掲載ページ:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/mokuji2.htm)2026年10月18日閲覧
つまり、飲食店だから免許が取れないわけではありません。国税局長が支障がないと認めれば免許を受けられます。その条件として手引きが挙げているのが、次ページの「区分」です。

出典:国税庁「一般酒類小売業免許申請の手引」9ページ(PDF:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/01.pdf/掲載ページ:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/tebiki/mokuji2.htm)2026年10月18日閲覧
| 区分すること | 手引きの文言 | 店でやること(例) |
|---|---|---|
| 場所 | 飲食店部分と酒販店部分との場所的区分 | 販売用の棚・冷蔵庫を飲食スペースと分けて置く |
| 仕入 | 飲用の酒類と酒販用の酒類の仕入が明確に区分 | 仕入伝票を飲食用・販売用で分ける |
| 売上 | 売上が明確に区分 | 販売用の売上を飲食の売上と分けて記録する |
| 在庫 | 在庫管理が明確に区分 | 販売用の在庫を別に数える |
| 確認方法 | それが帳簿により確認できる | 酒類の帳簿を販売用で付ける |
あわせて場所的要件では、販売場の営業が、区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性などで他の営業と明確に区分されていることが求められます。狭い店の一部に陳列棚を置くだけでは、明確に区分されているとは認められないとされています。
そのほかの要件
| 要件 | 主な中身 |
|---|---|
| 人的要件 | 過去に免許の取消処分を受けていない(受けた場合は3年経過)、申請前2年以内に国税・地方税の滞納処分を受けていない、一定の罰金刑から3年経過している など |
| 場所的要件 | 酒場・料理店等と同一の場所でない。区画割り・販売従事者・代金決済などで明確に区分されている |
| 経営基礎要件 | 国税・地方税を滞納していない、繰越損失が資本等の額を上回っていない、酒類の小売業を経営するのに十分な知識・能力がある、必要な資金・設備がある など |
| 需給調整要件 | 酒場・料理店等の接客業者でない(国税局長が支障ないと認めた場合を除く) |
「知識・能力」の要件では、酒類の販売業に3年以上従事した経験などがない場合、ほかの業での経営経験に加えて酒類販売管理研修の受講の有無などから実質的に審査されます。飲食店の経営経験と研修受講の組み合わせで説明するのが一般的な形です。
申請の流れ・期間・費用
| 順番 | 中身 |
|---|---|
| 1 申請書等の提出 | 販売場の所在地を所轄する税務署に提出(e-Taxでも可)。いつでも提出できる |
| 2 審査 | 受付順に審査。必要に応じて来署や現地確認がある |
| 3 登録免許税の納付通知 | 審査の結果、免許が付与される場合は税務署から「登録免許税の納付通知書」が届く |
| 4 登録免許税の納付 | 免許1件につき3万円。領収証書の原本を「登録免許税の領収証書提出書」に貼って税務署に出す |
| 5 免許の通知 | 納付を確認したうえで「酒類販売業免許通知書」が交付・送付される |
| 6 販売開始 | 販売業務を始めるまでに酒類販売管理者を選任し届け出る |
標準処理期間は、申請書等の提出の翌日から原則2か月以内です。書類の補正や追加提出の期間は含まれません。年末の繁忙期に販売を始めたいなら、逆算して早めに申請しておく必要があります。
主な申請書類
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 酒類販売業免許申請書と次葉1〜6 | 販売場の敷地の状況、建物等の配置図(陳列場所・標識)、事業の概要、収支の見込み、所要資金と調達方法、酒類の販売管理の方法に関する取組計画書 |
| 免許要件誓約書 | 申請者・役員・支配人など |
| 履歴書・定款の写し(法人) | 法人は監査役を含む役員全員の職歴 |
| 地方税の納税証明書 | 未納がない旨と、2年以内に滞納処分を受けていない旨の両方 |
| 賃貸借契約書等の写し | 土地・建物が賃貸の場合 |
| 直近3事業年度の財務諸表 | 個人は収支計算書等 |
| 土地・建物の登記事項証明書 | 全部事項証明書に限る |
配置図(次葉2)には、販売用の酒の陳列場所や倉庫部分を明示します。飲食スペースとの区分は、この図で説明することになります。
免許を取った後:酒類販売管理者
酒類小売業者は、販売場ごとに、販売業務を始める時までに酒類販売管理者を選任しなければなりません。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 選任できる人 | 酒類の販売業務に従事する人で、過去3年以内に酒類販売管理研修を受けた人(未成年者などは不可) |
| 雇用の条件 | 6か月以上継続して雇用される予定の人(生計を一にする親族・雇用期間の定めのない人を含む) |
| 兼任 | 他の販売場で酒類販売管理者に選任されていない人 |
| 選任しなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
研修は免許を受ける前でも受講できます。国税庁の手引きは「できるだけ早期に受講させる」よう求めています。
よくある質問
Q. 店内で出しているワインを、お客さんが気に入ったので新品のボトルを売ってもいいですか
栓を開けていない新品のボトルを売るのは酒類の小売に当たり、一般酒類小売業免許が必要です。
Q. 飲食店でも酒類小売業免許は取れますか
取れる場合があります。手引きは原則として接客業者でないことを求めていますが、国税局長が支障がないと認めれば免許を受けられます。飲食店部分と酒販店部分の場所的区分、仕入・売上・在庫管理の区分を帳簿で確認できるようにすることが必要です。
Q. ネットショップで大手メーカーのビールを全国に売れますか
通信販売酒類小売業免許で扱える国産酒は、前年度の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満の製造者の酒などに限られます。大手メーカーの酒は対象外です(輸入酒には制限がありません)。
Q. 申請してからどのくらいで販売を始められますか
標準処理期間は申請書等の提出の翌日から原則2か月以内です。審査が終わると登録免許税(3万円)の納付通知が届き、納付を確認したうえで酒類販売業免許通知書が交付されます。酒類販売管理者を選任してから販売を始めます。
Q. 申請はどこに出しますか
販売場の所在地を所轄する税務署です。e-Taxでも提出できます。個別の相談は、その税務署を担当する酒類指導官に問い合わせます。
販売を始める設備に使える補助金
販売用の冷蔵ケースや陳列棚、ネット販売のサイト制作には、補助金が使える場合があります。小規模事業者持続化補助金の使い方 と 開業したばかりで補助金は使える? を確認してください。
この記事で扱った手続き
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まとめ
- 店内でグラスに注ぐ酒は飲食店営業の範囲。栓を開けていない酒を売るなら一般酒類小売業免許、広い範囲への通販は通信販売酒類小売業免許
- 通販で扱える国産酒は、課税移出数量3,000キロリットル未満の製造者の酒などに限られる
- 飲食店の申請は需給調整要件の例外として扱われ、売り場の場所的区分と仕入・売上・在庫の区分(帳簿で確認できる)が要る
- 申請先は販売場の所轄税務署。審査は原則2か月、登録免許税は3万円
- 販売開始までに酒類販売管理者を選任(過去3年以内に研修受講)。無免許販売は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
この記事は制度の内容を整理したものです。個別の店舗で免許を受けられるか、区分の方法が足りるかは、所轄税務署の酒類指導官に確認してください。
免責事項
この記事は、行政書士試験の受験生(行政書士登録はしていません)が、公的機関の公開資料をもとに制度の内容を整理したものです。個別の案件についての相談・書類作成の代行はお受けしていません。最新の情報は各行政機関の案内で確認してください。
参考資料(一次資料)
- 国税庁「一般酒類小売業免許申請の手引」掲載ページ(2026年10月18日閲覧)
- 国税庁「一般酒類小売業免許申請の手引」(PDF)(2026年10月18日閲覧)
- 国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」(PDF)(2026年10月18日閲覧)


