飲食店にグリストラップは必要?大阪市の下水道条例と除害施設の届出・物件契約前の確認点を解説

飲食店の物件契約前に排水で確認する3点、グリストラップの有無・床下配管の勾配・排水経路 飲食店

飲食店の開業手続きを調べると、出てくるのは保健所・消防・用途変更です。実際、大阪市で飲食店を開業するには? でもその3つを軸に整理しました。

ところが、物件契約のあとにお金がいちばん動くのは、排水です。

「居抜きだからそのまま使える」と思っていた厨房に油脂を分離する設備がなく、床を上げる工事が必要になり、予算が百万円単位で膨らむ。あるいは開業後に油が詰まり、階下のテナントへ漏水させてしまう。どちらも実際に起きています。

この記事では、大阪市を前提に、厨房排水まわりで何が求められるのかと、物件契約の前に見るべき点を整理します。2026年9月時点の情報です。

厨房の排水は、そのまま流せない

飲食店の厨房からは、油分や食材くずを含んだ排水が出ます。これをそのまま公共下水道へ流すと、配管の詰まりや、下水道施設・河川への負荷につながります。

そのため、下水道へ排出する水には水質の基準が定められています。とくに飲食店で問題になるのが、動植物性油脂類(ノルマルヘキサン抽出物質)です。

大阪市の下水排除基準では、動植物性油脂類(ノルマルヘキサン抽出物質)は30mg/L以下とされています(1日平均排水量1,000㎥未満の場合。鉱油類は5mg/L以下)。

基準を超える排水を出すおそれがある場合、事業者側で処理する設備=「除害施設」を設けることになります(下水道法第12条第1項、大阪市下水道条例第7条・第7条の2)。厨房で使われるグリストラップ(油脂分離阻集器)は、この役割を担う設備です。

なお、建築基準法の側にも規定があります。汚水に油脂等を含む場合、阻集器を設けることが建築設備の構造として定められています(建築基準法施行令第129条の2の5第2項、昭和50年建設省告示第1597号)。

「義務かどうか」より「基準を満たせるか」

よく聞かれるのは「グリストラップは法律で義務ですか」という質問です。

制度の組み立ては、「この設備を付けなさい」ではなく「この水質で流しなさい」です。

そして、厨房排水でその基準を満たすには、実務上グリストラップ等が必要になります。

加えて、大阪市の指導や建物の管理規約で設置を求められることもあります。

誰が、何を出すのか

排水に関する手続きは、保健所とも消防とも別の窓口です。

窓口内容
飲食店営業許可保健所(大阪市は各生活衛生監視事務所)施設基準・食品衛生
防火対象物使用開始届・厨房設備の届出管轄消防署火災予防
排水(除害施設等)大阪市 建設局 下水道部 下水道資源循環課〔下水放流関係〕下水道法・大阪市下水道条例

この3つは、それぞれ独立して動きます。保健所で問題がなかったからといって、排水が適法である保証にはなりません。

厨房設備の火気側の届出は 炉・温風暖房機・厨房設備等設置届出、営業許可は 食品衛生法に基づく営業許可申請(飲食店営業) にまとめています。

いちばん高くつくのは「床」

グリストラップそのものの価格は、店舗規模にもよりますが、設備としては大きな買い物ではありません。問題は、それを設置できる床かどうかです。

状況起きること
床下に十分な深さがある床下埋設型を入れられる。標準的な工事
床下の深さが足りない床を上げる工事が必要。内装全体に波及する
排水管の勾配が取れない配管ルートの変更、ポンプアップの検討
厨房の位置を変えたい排水経路ごと作り直しになる

床を上げると、天井高が下がり、段差ができ、什器の高さも変わります。厨房だけの問題では済みません。

図面だけでは分かりません

「居抜きだから厨房はそのまま」という物件でも、前の店が何を作っていたかで排水設備は違います。

カフェの跡地に中華料理店が入れば、油の量はまったく別です。

契約前に、床下と排水経路を実際に確認してください。

居抜き物件で確認すべき点は 居抜き物件の造作譲渡で失敗しないために にもまとめています。

契約前に見る3点

内覧のときに、次の3つを確認します。これだけで、後から出る追加工事のかなりの部分が読めます。

  1. グリストラップがあるか。あるなら、容量と状態(清掃されているか、割れていないか)
  2. 床下の深さと勾配。排水管がどこへ向かっているか
  3. 排水の経路。ビルの共用縦管まで、どう接続されるか

そして、貸主・仲介会社に聞くべきことが1つあります。

「排水設備について、ビルの管理者から制約はありますか」

ビルによっては、油脂を多く出す業態の入居自体を制限していることがあります。

契約直前に判明すると、物件探しがやり直しになります。

開業後にかかる、維持のコスト

グリストラップは、入れて終わりではありません。日常の清掃が前提の設備です。

頻度内容
毎日バスケットの生ごみ除去
週1回程度浮上した油分のすくい取り
月1回程度底に溜まった汚泥の除去
定期業者による清掃

ここで重要なのは、清掃で出た油分や汚泥の扱いです。

厨房から出る一般的な生ごみとは違い、グリストラップから回収した油分・汚泥は産業廃棄物として扱われます。許可を持つ業者へ委託し、マニフェストで管理する必要があります。シンクに流す、生ごみと一緒に捨てる、といった処理はできません。

この維持費は、開業時の資金計画に入れ忘れられがちです。月々の固定費として見込んでおいてください。

詰まらせたときに起きること

管理を怠ると、次のような事態になります。

  • 厨房の排水が流れなくなり、営業を止めて対応する
  • 油が固着し、高圧洗浄などの復旧費用が発生する
  • ビルの共用配管を詰まらせ、階下テナントへ漏水する
  • 漏水の損害賠償を求められる

階下への漏水は、金額が読めません。内装・什器・在庫・休業補償まで及ぶことがあります。賃貸借契約と店舗総合保険で、どこまで手当てされているかを開業前に確認してください。

200㎡を超える物件なら、先に用途変更

排水の話とあわせて確認したいのが、建物側の手続きです。

事務所や倉庫を飲食店に変える場合で、用途変更部分の床面積の合計が200㎡を超えるなら、建築基準法の確認申請が必要になります。これは排水の工事より前に片づける手続きです。

詳細は 200㎡を超える物件で飲食店を開くなら用途変更が要る と 建築基準法に基づく確認申請(用途変更) にまとめています。

段取りに組み込む

排水を、開業スケジュールのどこに置くかです。

“` ① 物件の内覧(床下・グリストラップ・排水経路を確認) ↓ ② 契約前に、設計者・工事業者と一緒に現地を見る ↓ ③ 必要なら、大阪市 建設局 下水道資源循環課に事前相談(届出の要否・基準) ↓ ④ 内装設計(厨房レイアウトと排水を同時に決める) ↓ ⑤ 保健所の事前相談/消防の届出 ↓ ⑥ 工事 → 営業許可の施設調査 “`

②が抜けると、①の判断が甘くなります。不動産の内覧に設備を見られる人を同行させるだけで、結果が変わります。

保健所側で落ちやすい箇所は 大阪市の飲食店営業許可、保健所の検査で落ちるのはどこか、消防側の届出は 防火対象物使用開始届出 にまとめています。

よくある質問

Q. 小さなカフェでもグリストラップは必要ですか

油の使用量が少なくても、排水の水質基準は適用されます。規模が小さい場合の設備の選び方(床置き型・シンク下型など)は、設計者と大阪市の窓口に相談してください。「小さいから不要」と自己判断しないでください。

Q. ビルにすでに共用のグリストラップがあります。自店には不要ですか

ビルの設備の容量と、自店の排水量によります。共用設備があっても、テナント側に設置を求められることがあります。ビルの管理者に確認してください。

Q. 届出はいつ出すのですか

設備の設置工事の前です。届出の名称は 「除害施設設置等計画届出書」 で、正本・副本の計2部を提出します(大阪市の行政オンラインシステムからの電子申請もできます)。また、排水設備の工事に先立って排水設備計画確認申請が必要です。工事が終わってから相談しても、作り直しになります。

Q. 清掃を自分でやってもいいですか

日常の清掃は自店で行えます。ただし、回収した油分・汚泥は産業廃棄物として、許可業者に委託して処理する必要があります。回収物の処理まで自分でやることはできません。

Q. 保健所の検査では、排水は見られないのですか

飲食店営業許可の施設基準にも排水に関する項目はあります。ただし、下水道条例の水質規制とは別の審査です。両方を満たす必要があります。

この記事で扱った手続き

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まとめ

  • 厨房排水は下水道法・大阪市下水道条例の規制対象。窓口は保健所でも消防でもなく大阪市 建設局 下水道部 下水道資源循環課
  • 制度は「設備を付けろ」ではなく「この水質で流せ」。動植物性油脂類は30mg/L以下。厨房排水でそれを満たすには、実務上グリストラップ等が要る
  • 届出の名称は 「除害施設設置等計画届出書」。排水設備の工事前には排水設備計画確認申請も要る
  • 高くつくのは設備本体ではなく床。床下の深さが足りないと、床上げ工事で内装全体に波及する
  • 契約前に見るのは ①グリストラップの有無 ②床下の深さと勾配 ③排水の経路 の3点
  • 清掃で出た油分・汚泥は産業廃棄物。許可業者への委託が必要で、月々の固定費になる
  • 詰まらせると営業停止・復旧費用・階下への漏水につながる

この記事は制度の内容を整理したものです。自店の排水設備に届出が必要かどうかは、大阪市 建設局および設計者にご確認ください。


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