店を持っている飲食店が、イベント出店や移動販売のためにキッチンカーを始めるケースが増えています。そのときに必ず出てくるのが、「仕込みは自分の店の厨房でしていいのか」という疑問です。
結論から言うと、できます。大阪市のキッチンカーの営業許可の申請様式には、仕込み(一次加工)をする施設を書く欄と、その施設の営業許可証の写しを添付する確認書があります。自分の店がその「一次加工所」になるわけです。
あわせて、2025年6月1日から、関西2府5県と4つの政令市でキッチンカーの許可基準が共通になりました。この記事では、大阪市の申請様式と関西広域連合の指針をもとに、店の厨房を仕込み場所にする方法と、車に必要な設備を整理します。2026年10月時点の情報です。
キッチンカーにも「飲食店営業」の許可が要る
キッチンカー(自動車)で調理して販売するには、食品衛生法の飲食店営業の許可が必要です。店舗の許可とは別に、車ごとに許可を取ります。
| 項目 | 大阪市の場合 |
|---|---|
| 許可の種類 | 飲食店営業 |
| 申請に要る主な書類 | 営業許可申請書、営業設備の概要(自動車)2部、食品衛生責任者の資格を証する書類、法人なら登記事項証明書 |
| 申請先 | 生活衛生監視事務所 |
| 手数料 | 大阪市の手数料表に自動車の区分は無く、飲食店営業は新規16,000円(露店は8,000円) |
| 申請の時期 | 営業予定日の2〜3週間前 |
食品衛生責任者は、店舗で選任している人とは別に、キッチンカーにも選任が必要です。店のスタッフが兼ねられるかは、営業の実態とあわせて保健所に確認しておくと確実です。
仕込み場所=「基地施設」と「一次加工所」
キッチンカーの申請では、車の設備だけでなく、車をどこに置き、どこで仕込みをするかを書きます。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 基地施設 | 申請様式の「設備の概要」に書く一次加工所(仕込み場所)または自動車保管場所のこと(大阪府「自動車による営業の取扱い」)。大阪市の露店の案内では、食品等の保管・下処理・一次加工・給水・器具等の洗浄消毒を行う施設と説明されている |
| 一次加工所 | 基地施設のうち、下処理と一次加工を行う施設 |
| 下処理 | 野菜の土を落とす、魚のうろこや内臓を取る など |
| 一次加工 | 車内で簡単な調理で出せる状態にするため、あらかじめ食材を加工すること(例:食材のカット) |
大阪市の様式「自動車営業設備の概要(飲食店営業)」には、基地施設として自動車保管場所と一次加工所の所在地を書く欄があります。

様式の下段にあるのが「一次加工又は材料供給等確認書」です。「私は下記施設の調理場において原材料の一次加工を行います」(または、材料の供給を受ける/器具の洗浄を行う)として、その施設の屋号・業種・所在地・営業者氏名を書き、許可証の写しを添付します。
つまり、自分の店(飲食店営業の許可あり)を一次加工所として書き、店の許可証の写しを付けるのが基本の形です。
店の厨房を仕込み場所にするときの確認点
| 確認点 | なぜ |
|---|---|
| 店の許可の業種で、その仕込み作業ができるか | 関西広域連合の指針は、下処理(仕込み・一次処理)を「作業内容から判断される適切な許可又は届出を行った施設」で行うよう求めている |
| 自宅の台所を使わない | 住居の台所は営業施設と物理的に区画されていない限り使えない(大阪市は露店について、一次加工を自宅で行うことはできないと明記) |
| 運ぶ間の温度管理 | 車の冷蔵設備は10℃以下(冷凍は-15℃以下)で保冷でき、温度計が必須 |
| 店の営業時間と仕込みの時間 | 店の調理と仕込みが重なると、器具の洗浄や保管場所が足りなくなる |
関西広域連合の共通基準(2025年6月1日から)
関西広域連合は「関西広域連合域内における自動車による飲食店営業許可基準の共通化に係る指針」を定め、2025年6月1日から運用しています。対象は滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・徳島県と、京都市・大阪市・堺市・神戸市です。
この指針で、車に積む給水・廃水タンクの容量が、調理の内容によって3段階に整理されました。

| 営業の種類 | 営業内容(いずれかに該当) | 給水・廃水タンク |
|---|---|---|
| 比較的大量の水を要する営業 | 3工程以上の調理/通常の食器(使い捨てでない食器)を使う | 200L |
| 比較的大量の水を要しない営業 | 2工程の調理/複数品目を扱う | 80L |
| 簡易な営業 | 1工程の調理で、かつ1品目だけ | 40L |
工程数が少なくても、次のような作業をすると容量が上がります(リスクリスト)。
| 200Lになる作業の例 | 80Lになる作業の例 |
|---|---|
| 通常の食器を使う、食品を洗う(洗米を含む)、魚の頭や内臓を取る、加熱前の肉を切る、ゆでた麺を水で締める | 刺身など生の魚介をそのまま出す、生の野菜・果物を出す(カット済みの市販品などを除く)、生卵を割ってそのまま出す |
仕込みを店でしておくほど、車内の工程が減り、タンクを小さくできる関係にあります。たとえば野菜のカットを店で済ませておけば、車内で野菜を洗ったり切ったりする必要がなくなります。
車の設備で共通になったこと
| 設備 | 指針の取扱い |
|---|---|
| 水栓 | 手指の再汚染を防ぐ構造(レバー式・センサー式など)が必須。代わりの措置は認めない |
| 手洗いと食品の洗浄設備 | 200Lは別々に設置。80L・40Lは、食品の洗浄が不要で衛生上支障がなければ兼用可 |
| 冷蔵・冷凍設備 | 営業時間中、10℃以下(冷凍は-15℃以下)で保冷でき、温度計がある |
| 廃棄物容器 | 汚液や臭いが漏れず、蓋がある |
| けん引式 | 原則として切り離して営業しない。やむを得ず切り離すなら、すぐ移動できる場所にけん引車を待機させる |
基準が共通になっても、許可が1つになったわけではない
指針が共通化したのは許可の基準です。関西広域連合のページも「申請方法等は、各自治体窓口へお問い合わせください」としています。
営業許可は都道府県や保健所を設置する市ごとの許可です。ただし大阪府では、府と9市(大阪市・堺市・豊中市・吹田市・高槻市・枚方市・八尾市・寝屋川市・東大阪市)が協定を結んでいて、府内のどこかで飲食店営業の許可を受けたキッチンカーは、大阪府全域で営業できます。2025年6月1日からは和歌山県・和歌山市とも協定を結び、大阪府全域と和歌山県全域で営業できるようになりました(付帯的に行う魚介類販売を除く)。許可証の記載は、これまでどおり「○○市内一円」などのままです。
京都・兵庫など、それ以外の府県に出店するときは、基準が共通でも許可は別です。出店先の保健所に、手元の許可で営業できるかを事前に確認してください。
なお、2025年5月31日までに許可を受けた車は、6月1日以降に初めて許可を更新するときに限り、それまでの基準で許可を受けられます。
車内でできる調理・できない調理
車内での調理は「盛り付け」「トッピングをのせる」「お湯を注ぐ」「レトルトを温める」「生地や衣を作る」などは工程に数えないとされています。
一方、次のような作業は工程に数えたうえで、上のリスクリストに当たると容量が上がります。メニューを決める段階で、どの作業を店で済ませ、どの作業を車内でするかを割り振っておくと、車の設備とメニューの両方が無理なく決まります。
| 店(一次加工所)で済ませる | 車内で行う |
|---|---|
| 野菜を洗う・切る、肉を切って下味をつける、ソースを作る | 焼く・揚げる・温める、盛り付ける |
よくある質問
Q. 自宅のキッチンで仕込みをしてもいいですか
できません。住居の台所は営業施設と物理的に区画されている必要があり、大阪市は露店について「一次加工を自宅で行うことはできません」と明記しています。許可を受けた店の厨房などを使ってください。
Q. 店の許可とキッチンカーの許可は1つで足りますか
足りません。キッチンカーは車ごとに飲食店営業の許可を取ります。店の許可は、仕込み場所(一次加工所)として申請書に書き、許可証の写しを添付します。
Q. 大阪市で取った許可で、神戸のイベントに出られますか
関西広域連合の指針で基準は共通になりましたが、許可は自治体ごとです。出店先の保健所に、手元の許可で営業できるか、別に申請が必要かを確認してください。
Q. コーヒーとクレープを出したい。タンクは何Lですか
品目の数や工程の数え方には細かいルールがあり、市販の飲料の調製などは「1品目未満」として数える扱いもあります。最終的には申請先の保健所が判定するため、メニュー表と調理手順を持って事前に相談するのが確実です。
Q. 手数料はいくらですか
大阪市の手数料表では、飲食店営業の新規は16,000円です(自動車の区分は別に設けられていません)。
設備や決済端末の費用に使える補助金
キッチンカーの改装やキャッシュレス端末の導入には、補助金が使える場合があります。開業前後で使えるかは制度ごとに違うため、小規模事業者持続化補助金の使い方 と 開業したばかりで補助金は使える? を確認してください。
この記事で扱った手続き
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まとめ
- キッチンカーは車ごとに飲食店営業の許可。大阪市の新規手数料は16,000円
- 仕込みは許可を受けた施設で。大阪市の様式には「一次加工又は材料供給等確認書」があり、自分の店を一次加工所として書き、許可証の写しを添付する
- 2025年6月1日から関西2府5県4市で基準が共通。給水・廃水タンクは調理の内容で200L・80L・40L
- 大阪府内で取った許可は大阪府全域と和歌山県全域で使える(2025年6月1日から)。それ以外の府県は出店先の保健所に事前確認
この記事は制度の内容を整理したものです。個別のメニューや車の設備が基準に合うかは、申請先の保健所で確認してください。
参考資料(一次資料)
- 関西広域連合「関西広域連合域内における自動車による飲食店の営業許可基準の共通化に係る指針策定」(2026年10月11日閲覧)
- 大阪市「食品衛生法に基づく営業許可申請等の手続き」(2026年10月11日閲覧)
- 大阪市「露店営業及び臨時出店について」(基地施設・一次加工の定義と、一次加工を自宅で行えない点の参照元。2026年10月11日閲覧)
- 大阪市「食品衛生関係の申請手数料」(2026年10月11日閲覧)
- 大阪府「自動車による営業の取扱い」(2026年10月14日閲覧)


