飲食店を開くとき、キャッシュレス決済は「あとで考えること」になりがちです。
ただ、申し込んでもすぐには使えません。 審査に2週間から2か月かかることがあり、しかも審査で営業許可証を求められることがあります。営業許可が下りていなければ、そこで止まります。
この記事では、決済サービスの比較ではなく、開業の流れのどこで、何を、どの順番でやるのかを整理します。手数料の比較は決済会社のサイトのほうが詳しいので、ここでは触れる程度にします。
※ この記事は2026年9月14日時点の情報です。手数料・キャンペーン・補助金の締切は変わります。申込前に各社の公式サイトでご確認ください。
結論:営業許可より先には進めません
順番はこうなります。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 営業許可の申請・許可証の受領 | 大阪市は標準処理期間の公表なし(オープン予定日の2〜3週間前に手続き) |
| 2 | 開業届(個人)または設立登記・法人設立届出書 | — |
| 3 | 決済サービスへ加盟店申込 | — |
| 4 | 加盟店審査・利用開始まで | 数日〜2週間(⚠️マルチ決済端末は2週間〜2か月) |
| 5 | 端末の到着・設定・テスト | 数日 |
| 6 | 営業開始 | — |
3の申込で、1と2の書類を出します。 ここが逆になっていると、書類がそろわず審査に進めません。
「内装が終わったら決済を申し込もう」と考えていると、オープン日に決済が使えないことになります。
⚠️ 審査にかかる期間は、入れる決済手段で大きく変わります
ここがいちばん誤解されやすいところです。「1週間あれば入る」と思って直前に申し込むと、オープン日に間に合いません。
| サービス | 利用開始までの期間(公式) |
|---|---|
| PayPay | 審査完了から 1週間程度でキット到着・利用開始 |
| Square | フォーム送信後 1〜2営業日以内に審査結果 |
| Airペイ | 申込から利用開始まで 通常2週間程度 |
| stera pack | 申込完了から 約2週間〜2か月 |
PayPayやSquareのように単一の決済手段なら、数日から1週間程度で使えるようになります。
一方、飲食店で一般的な「クレジットカード(複数ブランド)+交通系IC+QRコード」をまとめて入れるマルチ決済端末は、決済ブランドごとに審査が順に行われるため、最短でも2週間、長ければ2か月かかります。
⚠️ オープンに合わせるなら、少なくとも1か月前には動く必要があります。
加盟店審査で何を出すのか
決済サービスによって違いますが、共通して求められるのは次のものです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等から1点 |
| 店舗の写真 | 外観1枚・内観1枚が一般的 |
| 法人番号(法人の場合) | 登記情報 |
| 営業許可証 | ⚠️飲食店は追加で求められることがある |
| 開業届の控え | ⚠️求められることがある(無くても申し込めるサービスもある) |
ここで見落としやすいのが店舗の写真です。内装が終わっていないと撮れません。つまり、工事の完了が審査のタイミングを決めます。
飲食店営業許可の申請手順は食品衛生法に基づく営業許可申請(飲食店営業)に、開業届は個人事業の開業・廃業等届出書、法人の場合は法人設立届出書(国税・府税・市税)にまとめています。
どの決済手段を入れるか
日本の決済手段は、大きく3つに分かれます。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| クレジットカード | Visa・Mastercard・JCB等 | 優先度が最も高い。客単価の高い会計で使われる |
| QRコード決済 | PayPay・楽天ペイ・au PAY等 | 少額決済で使われる。導入のハードルが低い |
| 交通系IC・電子マネー | Suica・iD・QUICPay等 | 決済が速い。回転率が要る業態で効く |
まずクレジットカード、次に客層に合わせてQRと電子マネーを足すというのが、上位記事に共通した順序です。
手数料と入金サイクルの相場
相場を幅で言うと、決済手数料は1.6%〜3.74%、初期費用は0円〜4,980円、月額は0円〜3,300円です。ただ幅だけでは選べないので、代表的な4サービスの公式の数字を並べます。
サービス別の実例(2026年9月時点・各社公式)
| PayPay | Square | Airペイ | stera pack | |
|---|---|---|---|---|
| QR決済の手数料 | 1.60%(ライトプラン)/1.98%(制限プラン)※税別 | — | — | — |
| クレジットカード | — | 3.25%(⚠️条件付き 2.50%) | 3.24%(⚠️条件付き 2.48%) | Visa/Mastercard 2.70%/その他 3.24% |
| 初期費用 | 0円(キット無料) | 4,980円(Square リーダー・税込) | 0円(カードリーダー無償貸与) | 0円(端末代無料) |
| 月額 | 0円(制限プラン)/1,980円(ライトプラン・税別) | 0円 | 0円 | 3,300円(税込・13か月目まで無料) |
| 入金サイクル | プランによる | 翌営業日(三井住友・みずほ)/他行は週1回 | 月6回(三菱UFJ・三井住友・みずほ)/他行は月3回 | 月6回・月2回から選択 |
| 振込手数料 | — | すべての銀行で0円 | すべての銀行で0円 | ⚠️三井住友は0円/他行は220円(税込) |
| 利用開始まで | 1週間程度 | 1〜2営業日で審査結果 | 通常2週間 | 2週間〜2か月 |
⚠️ 振込手数料は「回数 × 単価」で効きます。stera pack を三井住友銀行以外で使うと1回220円(税込)で、月6回入金なら月1,320円。月額3,300円と合わせて月4,620円になります。入金回数を減らせばその分下がるので、資金繰りに余裕があるなら回数を絞るという選び方もあります。
⚠️ 優遇料率には審査条件があります。「中小企業だから自動的に2.50%」ではありません。
| 主な条件 | |
|---|---|
| Square 2.50% | 日本政府が定める中小企業の定義に当てはまる/上場企業や企業グループと関連がない/キャッシュレス決済の年間総取引額が3,000万円未満 |
| Airペイ 2.48% | 中小企業庁の定める中小企業者(飲食なら資本金5千万円以下または従業員50人以下等)/上場会社やその子会社等でない/決済ブランドごとに審査(例:Mastercardは直近1年の決済額1,000万円以下) |
| stera pack | 中小企業者向けのスモールビジネスプランがあり、Visa/Mastercard 1.98%/JCB・Amex 2.48%。⚠️直近1年のVisa/Mastercard売上が2,500万円超でスタンダードへ移行 |
振込手数料は見落としやすい差です。 stera packで三井住友以外を使うと1回220円かかります。月6回なら年間で約15,840円です。
⚠️ PayPayだけを入れる場合と、クレジットカードも入れる場合では、話が別です。
PayPayはQRコード決済のサービスなので、クレジットカードや交通系ICを使いたいなら、Square・Airペイ・stera packのようなマルチ決済端末を別に検討することになります(これらはPayPayも扱えます)。
PayPayを入れる場合、実際いくらかかるか
月商300万円のうち、PayPayでの決済が2割(60万円)だとします。
| プラン | 月額 | 決済手数料(60万円分) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 制限プラン(月額0円) | 0円 | ⚠️料率はプランにより異なる | — |
| ライトプラン | 1,980円(税別) | 9,600円(1.60%・税別) | 11,580円(税別) |
⚠️ これはPayPay決済分だけの試算です。 クレジットカードや電子マネーを入れるなら、その手数料が別途かかります。
制限プラン(月額0円・1.98%)なら、60万円の手数料は11,880円。ライトプランとの差は300円です。 → ⚠️ 月額1,980円を料率差(0.38%)で取り返すには、月52万円以上のPayPay決済が要ります。 開業直後の見込み決済額で計算してから決めてください。
※ 料率とプランは改定されます。申込前に必ず公式でご確認ください。
⚠️ 手数料だけで選ぶと、運用が合わないことがあります。 レジカウンターで会計する店と、席で会計する店では、必要な端末が違います。据置型・モバイル型・QRのみ、のどれにするかは会計の動線で決まります。
また、入金サイクルは開業直後の資金繰りに直結します。月2回入金のサービスだと、売上が手元に来るまで最大で半月かかります。
レシートは「適格簡易請求書」になります
飲食店は、不特定多数の客に販売する事業として、適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付できます。レシートをそのままインボイスとして使える、ということです。
ただし、レシートに次の記載が必要です。
| # | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号 |
| 2 | 取引年月日 |
| 3 | 取引内容(軽減税率の対象品目である旨) |
| 4 | 税率ごとに区分して合計した対価の額 |
| 5 | 税率ごとに区分した消費税額等 または 適用税率(どちらか一方でよい) |
通常の適格請求書との違いは2つです。交付を受ける相手の氏名・名称が不要なことと、5で消費税額と適用税率のどちらか一方でよいことです。
⚠️ レジを選ぶときに関係します
ここが決済端末・POSレジの選定に効いてきます。登録番号を印字できないレジだと、簡易インボイスになりません。
テイクアウトがある店では、軽減税率(8%)と標準税率(10%)が混ざるため、税率ごとに区分して印字できることも必要です。
「安い端末にしたら登録番号が入らなかった」という形で後から効いてくるので、適格請求書発行事業者の登録をするなら、レジ選定の前に決めておくほうが手戻りがありません。
レジや端末に補助金は使えるか
使えますが、枠を間違えると対象外になります。
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)で、ハードウェアが対象になるのはインボイス枠(インボイス対応類型)だけです。通常枠では、レジも決済端末も対象になりません。
| 経費 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| ソフトウェア(50万円以下の部分) | — | 3/4以内(小規模事業者は4/5以内) |
| PC・タブレット等 | 10万円以下 | 1/2以内 |
| レジ・券売機等 | 20万円以下 | 1/2以内 |
⚠️ ハードウェアだけでは申請できません
公式サイトには、こう明記されています。
ハードウェアのみの申請は不可である。
「決済端末だけを補助金で買う」ことはできません。 補助対象として登録されたソフトウェアを導入し、そのソフトウェアを使うために必要なハードウェアとして、はじめて対象になります。
⚠️ 発注の順番を間違えると、全部が対象外です
“` ❌ レジを買う → 補助金を申請する → 対象外 ✅ 申請する → 交付決定を受ける → レジを買う “`
通常枠・インボイス枠とも、6次締切は2026年10月30日(金)17:00、交付決定は2026年12月10日(木)予定です(5次は9月29日で終了)。
11月までにオープンする店は、この補助金でレジを入れるのは間に合いません。 補助金に合わせて開業を遅らせるか、補助金を使わずに進めるかを、早い段階で決めることになります。
制度の詳細はデジタル化・AI導入補助金2026とは?通常枠6次締切10月30日・POSレジも対象になる枠を解説にまとめています。
開業前に終わらせておく手続き
決済の話は開業準備の後半に出てきますが、その前に終わっていないと営業できない手続きがあります。
全体の流れと期限は大阪市で飲食店を開業するには?必要な手続きの流れ・費用・期間を解説で整理しています。
よくある質問
Q. 営業許可が下りる前に、決済を申し込めますか
サービスによります。飲食店の場合、加盟店審査で営業許可証の提出を求められることがあるため、許可が下りてから申し込むのが確実です。また、審査には店舗の写真(外観・内観)が必要で、内装が終わっていないと撮れません。
Q. 申し込んでから、どのくらいで使えるようになりますか
入れる決済手段によって大きく違います。 PayPayやSquareのような単一サービスなら数日〜1週間程度ですが、クレジットカード各社や電子マネーをまとめて審査するマルチ決済端末(Airペイ・stera packなど)は2週間〜2か月かかります。⚠️オープンに合わせるなら、少なくとも1か月前には動いてください。
Q. 開業届を出していなくても申し込めますか
申し込めるサービスもあります。ただし開業届の控えを求められることがあるため、事前に提出しておくほうが審査が滞りません。個人事業の開業届は、事業開始の日から1か月以内に提出することとされています。
Q. PayPayの決済端末だけを、補助金で買えますか
できません。公式サイトに「ハードウェアのみの申請は不可である」と明記されています。補助対象として登録されたソフトウェアの導入とあわせて、そのソフトウェアを使うために必要なハードウェアとして申請する形になります。
Q. PayPayだけ入れれば足りますか
PayPayはQRコード決済のサービスです。クレジットカードや交通系ICも使いたいなら、Square・Airペイ・stera packなどのマルチ決済端末を別に検討することになります(これらはPayPayも扱えます)。⚠️客単価の高い店ほど、クレジットカードの優先度が上がります。
Q. PayPayの手数料はいくらですか
プランによって変わります。月額0円の「制限プラン」は1.98%、月額1,980円の「ライトプラン」は1.60%です(いずれも税別)。⚠️料率差は0.38%なので、月52万円以上PayPayで決済されないと、月額1,980円を取り返せません。開業直後は制限プランから始めるほうが無難です。
Q. 手数料がいちばん安いサービスを選べばいいですか
手数料だけでは決まりません。入金サイクル(翌営業日か、月2回か)は開業直後の資金繰りに直結します。また、レジカウンターで会計する店と席で会計する店では、必要な端末の形が違います。会計の動線を先に決めてから選ぶことになります。
Q. レシートをインボイスとして使うには、何が要りますか
適格請求書発行事業者の登録番号をレシートに印字する必要があります。あわせて、取引年月日・取引内容(軽減税率対象である旨)・税率ごとに区分した合計額・税率ごとの消費税額または適用税率のどちらかの記載が必要です。⚠️登録番号を印字できないレジでは、簡易インボイスになりません。
まとめ
- ⚠️キャッシュレス決済は、営業許可より先には進められません。加盟店審査で営業許可証を求められることがあります
- ⚠️審査期間は入れる決済手段で大きく変わります。単一サービスは数日〜1週間、マルチ決済端末は2週間〜2か月。オープンの1か月前には動くこと
- 店舗の写真(外観・内観)が必要なので、内装の完了が審査のタイミングを決めます
- 優先順位はクレジットカード → 客層に合わせてQR・電子マネー
- ⚠️手数料だけで選ばない。入金サイクル(翌営業日〜月2〜6回)は開業直後の資金繰りに効きます
- レシートは適格簡易請求書として使えますが、登録番号を印字できるレジが必要です
- 補助金でレジを買えるのはインボイス枠のみ。⚠️ハードウェア単体では申請できません
- ⚠️6次締切は2026年10月30日、交付決定は12月10日予定。11月までの開業には間に合いません
この事業に必要な手続きの一覧
飲食店の開業に必要な手続きは、許認可を探すで確認できます。この記事で扱った手続きは次のとおりです。
免責事項
本記事は情報提供を目的としています。筆者は行政書士試験の受験中であり、行政書士として登録していません。個別のご相談・手続きの代理は承っておりません。
記載内容は2026年9月14日時点の公表情報にもとづいています。手数料・キャンペーン・補助金の要件と締切は変わります。各決済サービスの公式サイト、および補助金の公募要領で最新の情報をご確認ください。税務の取扱いについては税務署または税理士にご確認ください。


