居酒屋やバーを開くとき、飲食店営業許可だけでは足りない場合があります。
深夜0時を過ぎてお酒を提供するなら、別の届出が必要です。そしてこの届出には、物件そのものに関わる条件があります。
つまり、物件を契約してからでは間に合わない確認事項が存在します。
届出が必要になる条件
風営法は「深夜」を、午前0時から午前6時までと定義しています。
| 営業内容 | 深夜における酒類提供飲食店営業の届出 |
|---|---|
| 深夜0時前に閉店する | 不要 |
| 深夜0時以降も営業するが、お酒は出さない | 不要 |
| 深夜0時以降にお酒を提供する | 必要 |
| 客に接待をともなう | 別制度(風俗営業許可) |
ポイントは、「お酒を主に出す店かどうか」ではないことです。ラーメン店でも定食屋でも、深夜0時を過ぎてビールを出すなら該当します。
提出先と期限
提出先は条文上「公安委員会」ですが、実務上は所轄の警察署を経由して提出します(風営法33条1項)。
期限は、営業を開始しようとする日の10日前までです(風営法施行規則103条)。
内装工事や保健所の許可と並行して動くので、オープン日から逆算しておく必要があります。
契約前に確認する3つ
これがこの記事の本題です。
1. その場所で営業できるか(条例で決まります)
禁止地域は、都道府県の条例で定められています(風営法33条4項)。
大阪府の条例は、こう定めています。
酒類提供飲食店営業を営む者は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域及び田園住居地域では、深夜において、その営業を営んではならない。ただし、第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域のうち公安委員会規則で定める地域にあっては、この限りでない。(大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例)
つまり住居系の用途地域は原則NGです。 ただし第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域については、公安委員会規則で定める地域なら例外として営業できます。
→ 「住居地域だから絶対ダメ」でも「商業地域だから絶対OK」でもありません。大阪府警が営業所設置許容地域の案内を出しているので、候補物件の住所で確認してください。
物件を内見しても分かりません。周りに飲み屋が並んでいても、その1軒だけ区域が違うことがあります。
なお、条例が施行・適用される時点で既に届出をして営業していた店には、その条例は適用されません(風営法33条5項)。既存店が営業しているからといって、新規に届出できるとは限らない理由がここにあります。
2. 客室の構造
施行規則99条が、構造・設備の基準を定めています。
| # | 基準 |
|---|---|
| 1 | 客室の床面積は一室9.5㎡以上(客室が一室のみの場合は適用されません) |
| 2 | 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない |
| 3 | 客室の出入口に施錠の設備を設けない(営業所外に直接通ずる出入口は除く) |
| 4 | 営業所内の照度が20ルクス以下とならないこと |
個室や、鍵のかかる客室は基準に引っかかります。居抜きで前の店の内装をそのまま使う場合も、基準を満たしているとは限りません。
「一室のみなら床面積の制限がかからない」という但し書きは、小箱のバーには効いてきます。
3. 貸主の承諾
届出には、その物件を営業に使う権原を示す書類が必要になります。
賃貸借契約書に「深夜営業不可」と書かれていれば、そこで止まります。「飲食店可」という表記だけでは足りません。
手続きの流れ
- 物件を決める(上の3つを確認したうえで)
- 飲食店営業許可を申請する(保健所)
- 営業開始日の10日前までに、深夜における酒類提供飲食店営業の届出書を提出する
- 営業開始
3は「許可」ではなく「届出」です。審査を待って可否が決まるものではありません。ただし、要件を満たしていなければ受理されません。
接待をすると、別の制度になります
「接待」に当たる行為をする場合は、この届出ではなく風俗営業許可が必要です。
接待とは、客の隣に座って継続的に話し相手をする、といった行為を指します。カウンター越しに会話する程度と、隣に座る営業とでは、制度が変わります。
同じ「バー」という看板でも、営業の実態で分かれます。
よくある質問
Q. 飲食店営業許可を取っていれば、深夜もお酒を出せますか?
いいえ。別の届出が必要です。飲食店営業許可は食品衛生の制度、深夜の届出は風営法の制度で、所管も窓口も違います。
Q. 開業してから深夜営業を始める場合は?
あらためて届出が必要です。ただし、物件が地域と構造の要件を満たしていなければ、後から届出はできません。将来的に深夜営業の可能性があるなら、物件選びの段階で条件を満たしておくべきです。
Q. 居抜き物件で、前の店が深夜営業をしていた場合は?
届出は引き継げません。新たに届け出る必要があります。また、前の店が営業していた時点では適法でも、その後に条例が変わっていれば、新規の届出はできないことがあります(風営法33条5項の経過措置は、既存の営業者にしか及びません)。
まとめ
深夜0時以降にお酒を出すなら、飲食店営業許可とは別の届出が要ります(風営法33条1項)。締切は営業開始日の10日前です(施行規則103条)。
そして届出には、物件に関する条件があります。
- 地域 — 都道府県の条例で禁止されている区域があります
- 客室の構造 — 一室9.5㎡以上・見通し・施錠設備・照度20ルクス
- 貸主の承諾 — 「飲食可」だけでは足りません
この3つは、契約してからでは変えられません。物件を決める前に確認してください。
※ 本記事は制度の情報提供を目的としたものです。条文は e-Gov 法令検索で確認しています。地域の指定は自治体の条例によるため、所轄の窓口にご確認ください。
この記事で出てくる手続き
根拠法・申請先・標準処理期間・手数料・様式を、手続きごとに1ページで整理しています。


