主任技術者・監理技術者は2現場を兼任できる?1億円未満の専任特例と営業所技術者の現場兼務の要件

主任技術者・監理技術者の専任特例|1億円未満なら2現場まで兼任 建設業

技術者が足りず、「専任が必要な工事を2つ同時に受けられない」と悩む建設会社は少なくありません。

2024年12月13日に施行された改正建設業法で、専任が必要な工事でも、一定の条件を満たせば主任技術者・監理技術者が2つの現場を兼任できるようになりました(専任特例1号)。また、営業所技術者(旧・専任技術者)が現場の主任技術者等を兼ねられる範囲も整理されています。

ただし、条件は「ICTを使えばよい」だけではありません。金額・移動時間・下請次数・連絡員・計画書まで、すべてそろって初めて使える特例です。この記事では、国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」(2025年2月1日適用版)をもとに要件を整理します。2026年10月時点の情報です。

そもそも「専任」が必要な工事とは

主任技術者・監理技術者は、原則として公共性のある施設や多数の人が使う施設の重要な工事では、現場ごとに専任でなければなりません(建設業法 第26条第3項)。

項目内容
金額工事1件の請負代金が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)
対象国・地方公共団体が注文する工事、道路・橋・上下水道、学校・病院・事務所・共同住宅・工場・倉庫などの工事(建設業法施行令 第27条)
「専任」の意味他の現場の仕事を兼ねず、勤務中は常にその現場の仕事だけに従事すること

「専任」は「常駐」と同じではありません。打合せや研修、休暇などで1〜2日程度現場を離れることは、適切な施工ができる体制があれば差し支えないとされています。

戸建て住宅は対象外です。民間の工事でも、事務所・共同住宅・店舗が入る建物などは対象になるため、「民間だから専任は不要」とはいえない点に注意が必要です。

2現場を兼任できる「専任特例1号」の要件

専任特例1号は、次の要件をすべて満たす場合に、主任技術者または監理技術者が専任を要する工事を兼任できる制度です。下請企業が置く主任技術者にも使えます。

国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」12ページ。専任特例1号の要件:1)各建設工事の請負代金の額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)、2)工事現場間の移動時間がおおむね2時間以内、3)下請次数が3を超えない、4)連絡員を置く。出典:国土交通省 PDF https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001859191.pdf 掲載ページ https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk1_000002.html 2026年10月11日閲覧
出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(令和7年2月1日より適用)12ページ(PDF:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001859191.pdf/掲載ページ:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk1_000002.html)2026年10月11日閲覧
#要件中身根拠
1金額各工事の請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)施行令 第28条
2距離1日の勤務時間内に巡回でき、事故等のとき移動時間がおおむね2時間以内(片道・自動車など通常の手段)施行規則 第17条の2第1項第1号
3下請次数自社が注文者となった下請契約から数えて3次まで同第2号
4連絡員各工事に連絡員を置く。土木一式・建築一式は同業種で1年以上の実務経験がある者同第3号
5施工体制の確認現場の施工体制(作業員の入退場など)を情報通信技術で遠隔から確認できる同第4号
6人員配置計画書計画書を作成し、工事現場ごとに備え置き、帳簿と同じ期間保存する同第5号
7映像・音声の機器現場の状況を映像と音声でやり取りできる機器と通信環境がある施行規則 第17条の3
8現場数兼任できるのは2現場まで施行令 第30条

要点をまとめると、1億円未満の工事を2つまで、移動2時間圏内で、下請3次以内、連絡員とICTで管理し、計画書を作る、という条件です。

途中で条件を外れたら、その時点から専任に戻る

運用マニュアルでは、工事の途中で請負代金が1億円以上(建築一式工事は2億円以上)になった場合や、下請次数が3を超えた場合は、それ以降は特例を使えず、工事ごとに専任の技術者を置かなければならないとしています。

追加工事で金額が膨らむ現場や、下請の重層化が進みやすい現場は、最初から特例に頼らない配置も検討しておく必要があります。

「ICT」と「連絡員」は何を用意すればいいか

項目マニュアルの考え方
施工体制の確認現場作業員の入退場が遠隔から確認できるシステム。建設キャリアアップシステム(CCUS)か、CCUSとAPI連携したシステムが望ましいが、遠隔で入退場が確認できれば他のシステムでもよい
映像・音声の機器必要なやり取りが確実にできればよく、一般的なスマートフォン・タブレット・Web会議システムでも差し支えない。山間部などで通信が確保できない現場は要件を満たさない
連絡員工事ごとに置く。同じ人が複数工事の連絡員を兼ねるのは可。専任・常駐は不要で、直接的・恒常的な雇用関係も不要。ただし施工管理の最終責任は請負会社が負う

人員配置計画書に書くこと

計画書には、会社の名称・所在地、技術者の氏名、技術者の時間外労働の見込みと実績のほか、工事ごとに工事名・場所・工事の種類・請負代金・現場間の移動時間・下請次数・連絡員・使う情報通信技術と機器を記載します。電子データで作成・保存することもできます。

また、現場に掲げる標識には、専任特例1号を使う場合は情報通信技術を利用している旨を書く必要があります。

営業所技術者が現場の技術者を兼ねる要件

建設業許可の営業所に置く営業所技術者(2024年12月の改正前の名称は「専任技術者」)は、原則として営業所に専任です。ただし、次の場合は現場の主任技術者等を兼ねることができます。

ケース主な要件
専任が必要な工事を兼ねる①その営業所で契約した工事 ②兼ねる現場は1つまで ③専任特例1号の要件(移動時間は「営業所から現場まで」と読み替え)を満たす ④会社と直接的・恒常的な雇用関係がある
専任が不要な工事で、営業所と現場が近い①その営業所で契約した工事 ②現場の仕事をしながら営業所の仕事もできる程度に近い ③営業所と常に連絡が取れる ④直接的・恒常的な雇用関係
専任が不要な工事で、近くない専任特例1号の要件(金額要件は除く)を満たす

特定営業所技術者は主任技術者または監理技術者の職務を、営業所技術者は主任技術者の職務を兼ねることができます。これらの方法と専任特例を同時に使うことはできません。

使えない組み合わせ

組み合わせ可否
専任特例1号の現場 + 専任が不要な現場可(専任が不要な現場も要件を満たし、合計2現場まで)
専任特例1号の現場 + 専任特例2号(監理技術者補佐を置く)の現場不可
営業所技術者の現場兼務 + 専任特例不可

専任特例2号は、現場ごとに専任の監理技術者補佐を置くことで、監理技術者が2現場を兼ねられる別の制度です。こちらは監理技術者だけが対象で、主任技術者には使えません。

よくある質問

Q. 民間のマンション新築(建築一式・請負代金1億5,000万円)を2つ同時に受けたい

共同住宅の建築一式工事で9,000万円以上なので、専任が必要な工事に当たります。建築一式の特例の上限は2億円未満なので、移動時間・下請次数・連絡員・ICT・計画書の要件をすべて満たせば、同じ技術者が2現場を兼任できます。

Q. 3つの現場を兼任できますか

できません。兼任できる工事の数は2までです(施行令 第30条)。

Q. 連絡員は自社の社員でなければいけませんか

直接的・恒常的な雇用関係は求められていません。ただし連絡員は請負会社が配置するもので、施工管理の最終責任は請負会社にあります。土木一式・建築一式の工事では、同業種で1年以上の実務経験が必要です。

Q. スマートフォンのビデオ通話でもよいですか

運用マニュアルでは、遠隔の現場と必要な情報のやり取りが確実にできるなら、一般的なスマートフォンやタブレット、Web会議システムでも差し支えないとしています。電波が届かない現場では要件を満たしません。

Q. 工事の途中で増額になり1億円(建築一式は2億円)を超えました

その時点から専任特例は使えません。以降は工事ごとに専任の技術者を置く必要があります。

現場のICT化に使える補助金

遠隔臨場カメラや施工管理システムなどの導入には、補助金が使える場合があります。対象となるツールや時期は制度ごとに違うため、デジタル化・AI導入補助金2026の解説 や 中小企業が使える補助金・助成金まとめ で確認してください。

この記事で扱った手続き

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まとめ

  • 専任が必要なのは、公共性のある施設などの工事で1件4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)
  • 専任特例1号:1億円未満(建築一式2億円未満)・移動おおむね2時間以内・下請3次まで・連絡員・ICTでの確認・人員配置計画書・映像音声の機器、をすべて満たせば2現場まで兼任できる
  • 途中で1億円以上になったり下請が4次以上になったら、その時点から専任に戻る
  • 営業所技術者は、営業所で契約した工事なら、要件を満たして1現場まで現場の技術者を兼ねられる。専任特例との併用は不可

この記事は制度の内容を整理したものです。個別の工事で特例を使えるかは、発注者や許可行政庁の窓口で確認してください。

参考資料(一次資料)


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