建設業許可は引き継げる?事業承継の事前認可とは|法人成り・相続の手続きと大阪府の流れを解説

建設業許可の事業承継で無許可の空白期間をゼロにする、譲渡・合併分割・相続の3つの型 建設業

建設業を次の代へ渡すとき、いちばん怖いのは許可が切れることです。

500万円以上の工事は、許可がなければ請け負えません。承継の手続きを間違えて許可が一度途切れると、その間は受注が止まります。積み上げてきた経営事項審査の実績も、振り出しに戻りかねません。

かつては実際にそうなっていました。令和2年10月に制度が変わり、いまは廃業せずに引き継げます。

この記事では、大阪府知事許可を前提に、建設業許可の事業承継(事前認可)の使い方を整理します。2026年9月時点の情報です。

昔は「廃業 → 新規」しかなかった

個人事業主が法人成りする場面を考えてみます。

制度が変わる前は、こうなっていました。

“` 個人の許可を廃業届で消す ↓ 法人で新規の許可申請(審査に約30日) ↓ その間、500万円以上の工事は受注できない “`

許可番号も変わり、それまでの実績も一からの積み直しでした。だから多くの会社が、法人成り自体を先送りにしていました。

いまは「事前に認可を受ける」形になった

令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、建設業許可の地位の承継について認可の制度が設けられました。

対象になるのは次の3つです。

型場面認可のタイミング
譲渡・譲受け個人から法人成り、事業譲渡、第三者へのМ&Aあらかじめ(事前)
合併・分割会社の合併、会社分割あらかじめ(事前)
相続個人事業主が亡くなった場合死亡後30日以内に申請

譲渡・合併・分割は、すべて事前認可です。ここが最大のポイントになります。

「先に譲渡してから届け出る」は、できません

事業譲渡契約を結んで営業を移したあとに認可を申請しても、その間の無許可状態は消えません。

手続きの順番は必ず「認可 → 承継の効力発生」です。

制度の入口は 建設業許可申請(大阪府知事許可・一般建設業) と同じ窓口です。

認可を受けると、何が変わるか

認可を受けて承継すると、許可を受けた地位がそのまま承継人に移ります。

  • 無許可の空白期間が生じない
  • 承継の効力発生日から、承継人が許可業者として営業できる
  • 許可番号を引き継げる(引き継ぎ方は次の節)
  • 経営事項審査に用いる完成工事高等の実績も引き継げる
  • 認可申請の手数料は無料(0円)。新規で取り直す場合の90,000円がかからない

逆に言えば、認可を受けずに進めると、この3つが全部得られません。法人成りしたあとに「実は許可が個人名義のままだった」と気づくケースは、いまも起きています。

許可番号はどうなるか

大阪府の認可の手引に、はっきり書かれています。

承継の形許可番号
許可を持たない者が承継する(個人から法人成り等)被承継者(譲渡人)の許可番号をそのまま引き継ぐ
許可業者どうしで承継するいずれか一方の許可番号を選択できる

番号が変わらないということは、取引先への説明も、名刺やウェブサイトの表記も、そのままで済むということです。廃業して取り直す方法との差は、ここにも出ます。

承継する側が、許可の要件を満たしている必要がある

認可は自動ではありません。引き継ぐ側が、建設業許可の要件を満たしていることが前提です。

要件見られること
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)承継後の会社に、要件を満たす人が常勤でいるか
営業所専任技術者承継後の営業所ごとに配置されているか
財産的基礎承継後の会社が、一般建設業なら500万円以上の資金調達力等を満たすか
欠格要件役員等が欠格要件に当たらないか
社会保険適切な社会保険に加入しているか

法人成りのときにつまずきやすいのは、経営業務の管理責任者です。個人事業主としての経験を、法人の役員としての経験にどうつなぐかを整理しておく必要があります。要件と証明の考え方は 建設業許可の経営業務管理責任者、要件よりも証明でつまずく にまとめました。

専任技術者の配置と証明については 常勤役員等(経営業務管理責任者等)及び営業所専任技術者の設置 にまとめています。資格を持たない技術者を実務経験で立てている場合は、承継後の会社でも同じ証明が必要になります。

一般と特定が重なると、承継できないことがある

見落とされやすい論点です。

同一の業種について、一般建設業と特定建設業の両方を同時に持つことはできません(建設業法第3条第2項)。

したがって、たとえば次のような組み合わせでは、そのままの承継が認められません。

譲渡人譲受人結果
内装仕上工事業(一般)内装仕上工事業(特定)そのままでは重複する
大工工事業(一般)大工工事業(一般)重複する

承継の前に、どちらかの業種を整理しておく必要があります。M&Aの検討段階で許可の内訳を突き合わせておかないと、契約直前に計画が崩れます。

決算変更届を溜めていると、そこで止まる

これは相談現場で非常に多い話です。

建設業許可を持っている会社は、毎事業年度の終了後4か月以内に決算変更届(事業年度終了届)を出す義務があります(建設業法第11条第2項)。

この届出を何年も出していない状態だと、承継の手続きに進む前に、過年度分をすべて出す作業が発生します。決算変更届は工事経歴書・財務諸表を含むため、3年分・5年分となると、それだけで数週間かかります。

決算変更届にかぎらず、被承継者側の届出事項に変更がある場合は、認可申請の前に変更届を出しておく必要があります。役員の変更や営業所の移転を届け出ないままにしていないか、あわせて確認してください。

手続きの内容は 建設業許可 事業年度終了届出書(決算変更届) と 建設業の決算変更届は毎年必要 にまとめています。

承継を考え始めたら、最初にやること

契約書の文言を考えるより先に、決算変更届が最新まで出ているかを確認してください。

ここが埋まっていないと、いつまでも次へ進めません。

相続は「死亡後30日以内」が勝負

個人事業主が亡くなった場合は、事前に認可を受けることができません。そのため別の扱いになります。

相続人は、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請します。申請をすれば、認可の可否が決まるまでの間、相続人が許可を受けているものとして扱われます。

30日は、とても短いです。

葬儀と並行して、次のことを進める必要があります。

  1. 事業を継ぐ相続人を決める(他の相続人の同意が必要)
  2. 経営業務の管理責任者・専任技術者の要件を満たせるか確認する
  3. 認可申請の書類を作る

要件を満たす人がいない場合、この制度は使えません。日ごろから、後継者が経管の要件を積めているかを確認しておくことが、いちばん確実な備えになります。

大阪府に出すときの流れ

大阪府では、承継の認可申請は事前相談から始まります。

“` ① 事前相談(大阪府 建築振興課) ↓ ② 必要書類の準備(承継契約書・要件の証明書類・決算変更届の完納確認) ↓ ③ 認可申請(承継予定日より前に) ↓ ④ 認可 ↓ ⑤ 承継の効力発生日 “`

窓口は 大阪府 都市整備部 住宅建築局 建築指導室 建築振興課(咲洲庁舎1階) です。建設業許可の新規申請と同じ窓口になります。

運用上のルールは、かなり具体的です。

事前相談承継の効力発生日の2か月前を目途に、電話で予約する
申請書の提出期限効力発生日の 30日前まで(余裕をみて45日前までが推奨されています)
受付の制限予約制。当面の間、1日2件まで
提出方法電子申請は不可。窓口へ紙で提出(正本・副本 各1部)
手数料無料(0円)
標準処理期間30日(年末年始・大型連休を除く)

1日2件という制限は、思っているより重い制約です。希望の日に予約が取れるとは限りません。登記の予定日や譲渡契約の効力発生日を先に決めてしまうと、後戻りできなくなります。

申請様式も形ごとに分かれています。譲渡及び譲受け=様式第22号の5/合併=様式第22号の7/分割=様式第22号の8/相続=様式第22号の10です。

よくある質問

Q. 法人成りするとき、必ず認可が要りますか

個人の許可を法人へ引き継ぎたいのであれば、認可が必要です。法人で新たに許可を取り直す方法も残っていますが、その場合は審査期間中の空白が生じ、許可番号も新しくなります。

Q. 認可を受けずに法人成りして、すでに営業しています。どうなりますか

法人としては無許可の状態です。まずは現在の受注内容を確認し、500万円以上の工事を請け負っていないかを確かめてください。そのうえで、法人としての新規許可申請を急ぐことになります。個人の許可を今から法人へ承継する形が取れるかは、窓口での相談事項です。

Q. 経営事項審査の実績は引き継げますか

承継の認可に伴い、被承継者の完成工事高等の実績を引き継ぐことができます。公共工事の入札を継続する予定があるなら、これは大きな意味を持ちます。ただし承継の形や時期によって扱いが変わるため、設計段階で確認してください。経審そのものの考え方は 経営事項審査(経審)とは にまとめています。

Q. 許可番号は変わりますか

許可を持たない者が承継する場合(個人事業主から法人成りするケースなど)は、被承継者の許可番号をそのまま引き継ぎます。許可業者どうしの承継であれば、いずれか一方の番号を選択できます。名刺・ウェブサイト・契約書の表記を変えずに済むかどうかが、ここで決まります。

Q. 親族以外の第三者へ譲る場合も使えますか

使えます。事業譲渡や株式譲渡を伴うМ&Aでも、建設業許可の承継として認可の対象になります。ただし、承継する側が許可の要件を満たしていることが前提である点は同じです。

この記事で扱った手続き

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まとめ

  • 令和2年10月から、建設業許可は廃業せずに承継できる(建設業法第17条の2・第17条の3)
  • 譲渡・合併・分割はすべて事前認可。承継してから届け出る形は取れない
  • 認可を受ければ無許可の空白期間が生じない。申請手数料は無料(0円)
  • 許可番号も引き継げる(無許可の者が承継するなら被承継者の番号/許可業者どうしなら一方を選択)
  • 大阪府は効力発生日の2か月前目途に電話予約 → 30日前までに紙で申請(1日2件の予約制・電子申請不可)
  • 引き継ぐ側が経管・専技・財産的基礎・欠格要件・社会保険を満たしていることが前提
  • 同一業種で一般と特定が重なると、そのままでは承継できない
  • 決算変更届の未提出があると、そこで止まる。承継を考えたら最初に確認する
  • 相続は死亡後30日以内に認可申請。要件を満たす後継者がいなければ使えない

この記事は制度の内容を整理したものです。個別の承継が認可の対象になるか、大阪府での提出方法・時期については、大阪府 建築振興課にご確認ください。


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