土地や建物を買う前、お金を貸す前、あるいは自宅のローンを返し終わったあとに確かめたいのが、その不動産に抵当権が付いているかどうかです。答えは登記事項証明書の乙区(おつく)に書いてあります。
ただ、乙区には過去に消された抵当権も残っていて、読み方を知らないと「まだ担保に入っている」と読み違えます。この記事では、乙区の読み方と、下線(抹消済み)・根抵当権の見分け方を、不動産登記法・不動産登記規則と法務省の案内をもとに整理します。2026年10月25日時点の情報です。
登記事項証明書の全体(表題部・甲区・乙区)の読み方は 登記事項証明書(登記簿謄本)の見本と読み方、取り方は 登記事項証明書(登記簿謄本)の取り方 にまとめています。
乙区=所有権以外の権利
不動産登記規則は、権利部を甲区と乙区に分け、甲区には所有権に関する登記、乙区には所有権以外の権利に関する登記を記録すると定めています(規則4条4項)。
| 区 | 記録されるもの | 例 |
|---|---|---|
| 甲区 | 所有権に関する登記 | 所有権保存・所有権移転・差押え・仮登記 |
| 乙区 | 所有権以外の権利に関する登記 | 抵当権・根抵当権・地上権・賃借権・地役権 |
抵当権は、お金を借りた人(債務者)などが、不動産を使い続けたまま借金の担保にする権利です。返せなくなったときに、抵当権を持つ人(抵当権者=多くは銀行)がほかの債権者より先に返済を受けられます(民法369条)。
乙区がない証明書もある
抵当権などが一度も登記されていない不動産は、証明書に乙区の欄そのものがありません。乙区がないことは、証明書の最後の認証文に書かれます。不動産登記規則197条1項は、甲区や乙区の記録がないときは、認証文にその旨を付記すると定めています。
「乙区が見当たらない」ときは、ページを読み飛ばしたのではなく、最後の認証文を見て確かめます。
抵当権の欄の読み方
法務省が公開している土地の全部事項証明書の見本では、乙区に次のように記録されています。
| 欄 | 見本の記載 | 意味 |
|---|---|---|
| 順位番号 | 1 | 乙区の中での順番 |
| 登記の目的 | 抵当権設定 | 何の登記か |
| 受付年月日・受付番号 | 令和1年5月7日 第807号 | 登記所が申請を受け付けた日と番号 |
| 原因 | 令和1年5月7日金銭消費貸借同日設定 | お金を借りる契約と同じ日に抵当権を設定した |
| 債権額 | 金4,000万円 | 担保している借金の額 |
| 利息・損害金 | 年2.60%(年365日日割計算)・年14.5%(年365日日割計算) | 契約で決めた利息と、遅れたときの損害金 |
| 債務者 | 法務五郎 | お金を借りた人 |
| 抵当権者 | 株式会社南北銀行 | お金を貸した人 |
抵当権の登記には、債権額と債務者を必ず記録し(不動産登記法83条1項)、利息や損害金の定めがあればそれも記録します(同法88条1項)。
債権額は「借りたときの金額」です。返済が進んでも、登記の債権額は自動では減りません。今いくら残っているかは、登記事項証明書からは分かりません。
下線が引かれた記録は「抹消済み」
乙区を見て一番まちがえやすいのが、下線です。
不動産登記規則197条5項は、抹消された事項を証明書に表示するときは、抹消された事項の下に線を付けて記載すると定めています。全部事項証明書には、すでに消された記録も下線付きで残ります。
抵当権が抹消されると、乙区は次のようになります。
| 順位番号 | 登記の目的 | 記載の見え方 |
|---|---|---|
| 1 | 抵当権設定 | 全体に下線が引かれる |
| 2 | 1番抵当権抹消 | 抹消の原因(「令和◯年◯月◯日解除」「弁済」など)と受付年月日 |
登記官は、権利の登記を抹消するとき、抹消の登記をするとともに、抹消すべき登記に抹消の記号を記録します(規則152条1項)。そのため、元の抵当権の記録は下線付きで残り、その下に「◯番抵当権抹消」という新しい記録が加わります。
下線が引かれていない抵当権が、今も効力のある抵当権です。今の状態だけを見たいなら、抹消された記録を載せない現在事項証明書を取る方法もあります。
根抵当権は「極度額」で見分ける
乙区には、根抵当権(ねていとうけん)が記録されていることもあります。事業の借入れや取引の担保によく使われます。
| 抵当権 | 根抵当権 | |
|---|---|---|
| 登記の目的 | 抵当権設定 | 根抵当権設定 |
| 金額の欄 | 債権額(借りた金額) | 極度額(担保する上限) |
| 担保するもの | 特定の借金 | 一定の範囲の取引から生じる不特定の債権 |
| 追加で書かれる欄 | 利息・損害金 | 債権の範囲(例:銀行取引、売買取引) |
根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保するものです(民法398条の2第1項)。登記には「担保すべき債権の範囲及び極度額」を記録します(不動産登記法88条2項1号)。
ポイントは、根抵当権は特定の借金を返しても、それだけでは消えないことです。取引が続く前提の担保なので、借入れの残高がゼロでも、根抵当権の登記は残ります。消すには、根抵当権者との合意(解除など)と抹消の登記が必要です。
甲区と乙区、どちらが先かは「受付番号」で見る
所有者が変わった登記(甲区)と、抵当権の登記(乙区)が、どちらが先にされたかを知りたいことがあります。
同じ区の中では順位番号で前後を見ますが、甲区と乙区のように別の区の間では、受付番号で前後を判断します(規則2条1項)。登記した権利の順位は登記の前後で決まります(不動産登記法4条1項)。
法務省の見本では、甲区2番の所有権移転が「令和1年5月7日 第806号」、乙区1番の抵当権設定が「令和1年5月7日 第807号」です。同じ日に、所有権移転のあとに抵当権が設定されたことが分かります。ローンを組んで買った不動産の典型的な形です。
共同担保目録:ほかの不動産も担保に入っているか
1つの借金のために、土地と建物など2つ以上の不動産に抵当権を設定することがあります。この場合、どの不動産が一緒に担保になっているかは共同担保目録に記録されます(不動産登記法83条2項)。
共同担保目録は、証明書を請求するときに「載せる」を選ばないと付いてきません。土地だけを見て「建物には抵当権がない」と思い込まないよう、必要なら共同担保目録も請求します。
ローンを完済したら、抵当権の抹消登記を申請する
住宅ローンを返し終わっても、抵当権の登記は自動では消えません。金融機関から書類を受け取り、所有者が抹消の登記を申請します。法務省民事局は、そのための案内を出しています。

案内のポイントは次のとおりです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 金融機関から届く書類 | 登記識別情報(または登記済証)、解除証書・弁済証書などの登記原因証明情報、委任状 |
| 申請書 | 自分で作る。法務局は申請書の作成を代行しない |
| 抹消する抵当権の特定 | 順位番号を書く。順位番号は登記事項証明書で確認できる |
| 登録免許税 | 不動産1個につき1,000円(マンションは建物と敷地権の土地で数える) |
| 申請先 | 不動産の所在地を管轄する法務局。窓口・郵送・オンライン |
案内は、書類を受け取ったらできるだけ速やかに申請することをすすめています。所有者の住所や氏名が登記と変わっている場合は、抹消の前に変更の登記が必要になることもあります。
よくある質問
Q. 乙区に抵当権があっても、下線が引かれていれば問題ありませんか
下線が引かれた抵当権は抹消済みです。ただし、下線のない別の抵当権・根抵当権が残っていないか、順位番号を最後まで確認します。
Q. 債権額4,000万円と書いてあれば、今も4,000万円借りているのですか
いいえ。債権額は抵当権を設定したときの金額で、返済が進んでも登記は変わりません。残高は登記事項証明書からは分かりません。
Q. 根抵当権の極度額は借入額ですか
極度額は、担保できる上限の金額です。実際に借りている額とは限りません。
Q. ローンを完済したのに乙区に抵当権が残っています
抹消の登記を申請していない可能性があります。金融機関から届いた書類で、所有者が抹消の登記を申請します。
Q. 乙区の欄がない証明書は、どこかが欠けていますか
乙区に記録がない不動産は、乙区の欄がありません。その旨は証明書の最後の認証文に書かれています。
まとめ
- 抵当権は乙区に記録される(乙区=所有権以外の権利・規則4条4項)
- 抵当権の欄は債権額・債務者・抵当権者を見る。債権額は設定時の金額で、残高ではない
- 下線が引かれた記録は抹消済み(規則197条5項)。抹消されると「◯番抵当権抹消」の記録が加わる
- 根抵当権は極度額と債権の範囲で見分ける。借入れを返しても、それだけでは消えない
- 甲区と乙区の前後は受付番号で見る(規則2条1項)
- ローンを完済したら、金融機関の書類で抹消の登記を申請する(登録免許税は不動産1個1,000円)
この記事で扱った手続き
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参考資料(一次資料)
- 法務局「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」(2026年10月25日閲覧)
- 法務省民事局「住宅ローンを完済した方へ(マンション編)」(PDF)(2026年10月25日閲覧)
- 法務省「全部事項証明書(土地)の見本」(PDF)(2026年10月25日閲覧)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(第4条・第83条・第88条、2026年10月25日閲覧)
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」(第2条・第4条・第152条・第197条、2026年10月25日閲覧)
- e-Gov法令検索「民法」(第369条・第398条の2、2026年10月25日閲覧)


